スーパーフィシャルフロントアームラインの概要とリハビリ応用/アナトミートレイン【筋膜】



スーパーフィシャルフロントアームラインとは

引用:ムービングボディ―動きとつながりの解剖学 クリス・ジャーメイ著

スーパーフィシャルフロントアームライン(SFAL)はアナトミートレインの筋膜ラインの一つです。

superficial front arm lineと英語では表記します。

体幹から上肢まで連結するラインは4つあり、そのなかの前面・表層に走るラインになります。

大胸筋と広背筋が含まれているため、肩関節の内転・伸展、手関節や手指の屈曲に作用します。

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スーパーフィシャルフロントアームラインの走行

筋のつながり

大胸筋、広背筋

内側筋間中隔

手根屈筋群

手根管

アナトミー・トレインより画像引用

前面のラインですが、広背筋が含まれています。

これはもともとヒトの広背筋は腹部に位置していましたが、ヒトの進化の過程で背面に位置するようになったとされているからです。

骨のつながり

鎖骨内側1/3、肋軟骨、下位肋骨、胸腰筋膜、腸骨稜

上腕骨内側線

上腕骨内側上顆

手指掌側面

SFALの機能と特徴

●上肢の位置の制御、物を持つ・掴む動作に作用

●大胸筋は短縮しやすく、前後のバランスが崩れやすい

 

上肢の位置の制御、物を持つ・掴む動作に作用

SFALには大胸筋と広背筋が含まれます。

この二つの筋はアナトミートレインのラインの一つであるファンクショナルラインを構成している筋でもあります。

そのため、SFALとFLが連結していることがわかります。

この連結によって、上肢の運動時にFLが体幹の安定化に働き、より上肢が機能的に働けます

FLは下肢まで連結しているので、下肢の安定が体幹の安定にもつながります。

また四指の屈曲に作用しており、大胸筋・広背筋の強さは握力の強さに関与すると言われています。

 

大胸筋は非常に短縮しやすく、前後のバランスが崩れやすい

大胸筋が短縮すると、肩関節内転・内旋し、上腕骨が内旋することで肩甲骨は外転し、広背筋は伸張固定されてしまいます

広背筋の機能不全と大胸筋の短縮で肩甲骨の可動が制限されます。

また、広背筋の深層にある前鋸筋の働きも抑制されますので、上肢運動時の肩甲骨の安定が損なわれます。

肩甲骨の動きが阻害されることで肩関節や脊椎での代償運動にもつながります。

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 SFALを考慮してリハビリに応用する

今回は、治療というより上肢を他動で操作する際の小技になります。

肩周辺や肩甲骨まわりのストレッチを行う際に、大胸筋で固めて上肢が全然動かない人っていると思います。

「力を抜いてください」で抜ければいいですが、なかなかそういかないことがあります。

その際には手首・手指を握り込んで手部が硬いパターンが多いです。

SFALは大胸筋から手部屈筋までの連結なので、手首や手指を動かしてあげると肩まわりの緊張もゆるんできます