ラテラルラインとは
ラテラルライン(LL)はアナトミートレインの筋膜ラインの一つです。
Lateral Lineと英語では表記します。
頭部の後外側の筋から頸部前外側を通って、体幹外側、大腿外側、下腿外側の筋までの筋膜の連結です。
左右両側に存在し、体幹の側方や回旋の動きを制動することが大きな役割です。
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ラテラルラインの走行
筋のつながり
頭板状筋/胸鎖乳突筋
↓
外・内肋間筋
↓
外腹斜筋
↓
大殿筋
↓
大腿筋膜張筋
↓
腸脛靭帯/外転筋
↓
前腓骨頭靭帯
↓
腓骨筋
↓
外側下腿区画
骨のつながり
後頭骨稜、乳様突起
↓
第一肋骨、第二肋骨
↓
肋骨
↓
上後腸骨棘、上前腸骨棘、腸骨稜
↓
脛骨外側顆
↓
腓骨
↓
第一中足骨底と第五中足骨底
LLの機能と特徴
特徴としましては、以下のようなものが挙げられます。
- 身体を両側から支え、身体側方への動きを制動している
- 外側X字の法則
- 左右のラインのバランスを崩しやすい
各特徴を詳しく見ていきましょう。
身体を両側から支えるライン
LLは身体の外側の筋で構成されているため、運動としては体幹の側屈、股関節の外転、足関節の外返しなどに関与しています。
また、体幹の側方運動や回旋運動に対して制動する役割を持っています。
上肢の運動をする際に、体幹の側屈・回旋などの運動が伴いますが、このときにLLが体幹と下肢とを連結し固定することで身体が崩れることを防いでいます。
つまり、LLが機能しているから上肢機能を発揮できるとも言えます。
肩関節機能障害など評価する際にはLLもポイントの一つとなりますね。
外側X字の法則
LLには内・外腹斜筋と内・外肋間筋が含まれます。
この腹斜筋と肋間筋の筋の走行は、内腹斜筋・肋間筋と外腹斜筋・肋間筋がX字のように重なるように走行しています。
教科書では「外側を介して前後両面を編み上げるくつひものようだ」と表現しています。
これは体幹の回旋の動きにもLLが関与していることを示しています。
特に歩行時の回旋ではLLの外側X字が大きく関与している 。
そのため肋間筋をも歩行筋として捉えることができる。
左右のラインのバランスを崩しやすい
LLを構成している筋として筋長の短い肋間筋や靭帯である腸脛靭帯が含まれています。
また、姿勢の保持に主に働くため、持続的な収縮が要求され、血流の制限にもつながりますし、利き手・利き足の関係で左右のバランスも崩しやすいラインになります。
変形性膝関節症やラテラルスラストにもこのラインが影響してることが想像できます。
"ラテラルラインを考慮してリハビリに応用する
下肢が治療対象の場合
大腿骨転子部骨折や頚部骨折などでは手術でTFLや腸脛靭帯を切開するため、
その後のリハビリでは股関節の可動域制限や膝関節の屈曲動作で大腿外側に痛みを訴える症例はとても多いと思います。
また、患側下肢に荷重をかけないように生活するため、上肢の支持を多く使用します。
体幹の側屈や上肢を下に押し付けるため、側腹部の短縮つまり肋間筋の短縮につながります。
そこで治療としては、
- 側臥位にて骨盤を固定し、胸郭・肋骨の回旋を促したり、側臥位のまま上の上肢をバンザイして側腹部の伸張
- 歩行につなげる場合は、壁に対して横向きとなり(患側が壁側)、患側上肢を挙上して壁につきます。そして患側立脚期での体幹の抗重力伸展がつくれるので、この肢位でのstep練習などで、中殿筋が働きやすい姿勢をつくります。
など
下肢を治療ターゲットにしますが、肋骨筋などの体幹上部の動きが重要になってきます。
大腿骨転子部骨折の記事はこちら
肩関節周囲炎や腱板損傷などで上肢挙上動作が阻害されているケースでもこのラインが重要になります。
上肢挙上時には肋骨が挙上し、肩甲骨は後傾します。
そのため肋間筋の柔軟性が必要です。また、胸鎖乳突筋が短縮して頭部前方位姿勢であれば、肩甲骨が外転し前傾していることが考えられます。
臨床において肋骨の動きを胸郭・肋骨の回旋の動きが出ると上肢挙上が軽くなるケースを多く目にするため、
このラインのことを考慮して上肢の治療を進めていく必要があります。