理学療法の対象となる患者には関節拘縮を呈している方は多くいると思います。
治療として「リラクセーション」、「関節可動域訓練」をするとは思いますが、それだけに時間を割くわけにはいきません。
リハビリ時間以外の時間のほうが多いので「ポジショニング」による拘縮の治療、予防が重要になってくるのではないでしょうか。
ポジショニングの対象となる拘縮
拘縮は先天的な一次性拘縮と後天的な二次性拘縮に分類されます。
後者については病変部位やその原因によって分類でき
➀皮膚性
➁結合組織性
➂筋性
➃神経性
➄関節性
に分類できます。
この中でポジショニングでのターゲットとなるのは筋性の拘縮になるのではないでしょうか。
"筋性拘縮
筋性拘縮は関節が特定の肢位で長期間固定されたことで骨格筋の短縮や萎縮がおこり拘縮に至るものです。
それだけではなく、麻痺の痙縮の影響や痛みや浮腫などで、筋に異常収縮が引き起こされることも要因の一つになります。
筋の収縮と弛緩の過程ではCa⁺が関わってきます。弛緩の際にはカルシウムポンプによるトロポニンから筋小胞体へのカルシウムイオンの取り込みが必要です。
しかし、骨格筋は不動状態におかれるとカルシウムポンプ機能が低下するとされ、不動後の骨格筋は弛緩しにくい状態になります。
このように骨格筋の不動によって筋の弛緩を行えないと筋収縮が持続し、拘縮に至ります。
拘縮治療におけるポジショニングとは
完全にレスト状態を作ることが目的ではありません。適切な感覚情報が与えられて、
余計な緊張を抑制して、それによってまた感覚が入力されやすくなるということも考える必要があります。
片麻痺患者さんを例にすると
片麻痺の方は感覚障害の影響もあり、身体が床面に接していることを実感できないため「身体が麻痺側に落ちていく」と表現することがあると思います。
そのため麻痺側の安定感を求めるために非麻痺側でpushする戦略をとったり、過剰に非麻痺側の安定感求めようと筋緊張を高め安定感を得ようします。
しかし過剰な筋緊張は感覚情報の入力を抑制するため、非麻痺側の身体が床面で支えられているという感覚までも抑制させてしまうのです。
このような安定感が損なわれた背臥位では呼吸や精神活動にも大きな影響を与えるとされています。
そうですよね。
変な想像かもしれませんが
例えば、構想ビルの屋上の端っこに柵なしのベッドを設置してそこで寝るとすると、柵がないから「もし寝てて寝返りして屋上から落っこちたらどうしよう」とか考えて、変に力は入るし、ぐっすりなんて寝れないですよね(笑)
そのため臥床時のポジショニングは身体各部が転がらずに、床面に支えられているという感覚がわかりやすくなるポジショニングを行う必要があります。
"拘縮予防におけるポジショニングの実際
ポジショニングの基本として4つあります。
一つずつ解説していきます。
➀腰が反らないようにし腰背部のベースをつくり、肩甲骨は外転位、頸部は軽度屈曲位
股関節を軽度屈曲位とし骨盤を後傾にて腰背部の支持面を広くします。
また頸部を軽度屈曲することにより相反神経支配により腹筋群が活性化し背部の抗重力筋の活動を抑制することができるとされている。
肩甲骨も外転位にしてさらにベースを広くとることで接触面が大きくなるため余計な筋緊張がとれ、呼吸も楽になります。
背臥位姿勢の具体的な修正方法はこちらの記事に書いています
➁頸頚部、体幹部など、全身のねじれ・傾きをなくす
身体にねじれが生じ、左右非対称性の姿勢であると床面との接触面積が減少し臥床姿勢が不安定となってしまいます。
また、ねじれからの違和感、痛みにより過緊張が生じ、それが拘縮であったり、感覚情報を入力されずらい状態を生み出してしまいます。
側臥位は非対称な姿勢となりやすいです。具体的な修正の仕方はこちらの記事に書いています👇
➂身体とマットレスの間に隙間をつくらない
床面と身体の間に隙間が多くあると、支えている面には多くの荷重がかかることになります。
それによって痛みを生じることもありますし、支えている面が少ないため不安定でもあります。
この不安定感がさらなる過緊張を助長することが考えられます。
そのため身体と床面の間を埋めて、局所に圧が集中しないようにし多くの面で支える必要があります。
➃マット・クッションは、やわらかすぎるものを使用しない
やわらかすぎるマットレスを使用すると床面が不安定なため全身の過緊張を助長します。
しかし、褥瘡の治療で柔らかいマットレスにしている場合はそちらを優先すべきだと思います。
褥瘡の予防であれば、普通のマットレスでもタオルやクッションでポジショニングを設定してあげることで予防ができると思うので、
看護師さんと相談して決めることになるでしょう。
拘縮予防のポジショニングを家族や他職種への指導もできるとベスト
一日にリハビリが関わる時間は1時間程度でしょう。
その他の多くの時間は介護・看護師が関わることになります。
また、今後在宅療養のケースも増えてくることが予想されます。
そのため家族にも適切なポジショニングを指導できると拘縮の予防につながっていくいきます。
また、簡単なアライメントのチェックの仕方や修正方法も指導し、例えば「股関節屈曲させたけど腰部は反ったまま」といったことにならないように説明することも必要でしょう。
参考図書・教科書