今回は触診という意味での“タッチ”ではなく、ケアとしての“タッチ”について。
ケアとしての触診・タッチ
タッチとして「なでる」「さする」「手を当てる」があると思います。
小さい頃に怪我をしたとき、よく親にさすってもらったことって誰にもあるんではないでしょうか。
さすってもらうと何分間かはなんか痛みが少なくったような気がして泣き止んだこともあったように思い出します。
自分でもお腹が痛いときはお腹をさすったり、頭が痛いときはこめかみをさすったり押したりといまでも痛みや違和感がある場所は自然とタッチしている人が大多数だと思います。
ではこうしたタッチすることによる作用・効果はどういったものなのでしょうか?
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触診・タッチの作用と効果
オキシトシンの作用
オキシトシンとは視床下部で産生され下垂体後葉で分泌されるホルモンです。
このオキシトシンは触れることで分泌が促され、ストレスに関連するコルチゾール(交感神経を優位にする)の分泌を抑制し、脈拍や血圧を安定化させてくれます。
ゲートコントロール理論
痛みを伝える神経線維はAδ繊維とC繊維になります。タッチするということは触覚が刺激されますが、
この触覚刺激はAβ繊維を通って脊髄に伝わります。神経には太い方が伝達速度が速いという特性があるため、
この特性を利用し、強い刺激の方が優位に脳に伝達され弱い刺激の伝達を抑制するという考え方です。
簡単に言うと、痛み刺激をタッチの刺激で上書きしちゃうといった感じです。
ゲートコントロール理論については物理療法の授業で習ったことがあると思います。
オキシトシンとはなにか、どんな作用があるかもう少し掘り下げていきましょう。
オキシトシンとは
視床下部神経細胞(室傍核と視索上核)で合成され、下垂体後葉から分泌されるホルモンです。
最近ではオキシトシンは、「幸せホルモン」「信頼のホルモン」「安らぎホルモン」「愛情ホルモン」とも言われ注目されています。
人が他人を愛したり信用したりするときには脳内でオキシトシンが分泌されていると言わ れています。
生理的作用
・分娩時の子宮平滑筋の収縮
妊娠末期になると子宮のオキシトシン受容体数はおよそ100倍に増加します。
これによりオキシトシンに対する子宮筋の感受性が高まり、子宮収縮、分娩に至ります。
・乳腺からの乳汁分泌
オキシトシンには乳房の筋上皮細胞を収縮させる作用があります。
吸引刺激によりオキシトシンが分泌され、筋上皮細胞が収縮することで乳房に溜まっていた乳汁が流しだされます。
オキシトシンとストレスの関連
私たちの体は痛みやストレス、恐怖を感じたときに脳の深部にある大脳辺縁系の一部である「扁桃体」を中心としたシステムが働きます。
偏桃体は交感神経系との関連が強いため、ストレスがかかると交感神経系が刺激され、血圧・脈拍の上昇などをきたし、不眠の症状をもたらすこともあります。
オキシトシンはこの偏桃体に抑制性に働きます。
偏桃体にはオキシトシン受容体が多く存在していることが報告されており、
ストレス状態であるときにオキシトシン分泌が促される行為がなされると、
下垂体後葉からオキシトシンが分泌され偏桃体を鎮静化してくれて、高血圧や不眠などの症状が改善されるというわけなのです。
オキシトシンの分泌
オキシトシンは子宮平滑筋の収縮や乳汁分泌促進作用など妊娠・分娩時に作用していますが、
妊娠していない女性や男性でも同様に、視床下部でオキシトシンが 生成されています。
生成されたオキシトシンの分泌を促すものとしてスキンシップが挙げられます。
赤ちゃんを抱っこする、恋人同士が手をつなぐ、ハグをする、などで男女ともに分泌が促されます。
マッサージで心地よく人に触られたり、ペットをなでるのも良いそうです。
直接的な触れ合いだけではなく、家族で団らんしたり、親しい人との会話・電話でも分泌されます。
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ケアとしての触診・タッチのやり方
テレビでオキシトシンが取り上げられたときに、タッチのやり方を紹介していました。
1秒間に5㎝程度のゆっくりと大きく優しくさするようにするのがいいそうです。
※手の圧や動かすスピードは反応を見ながら行うべきだと思います。
刺激が強く不快な刺激となっていると緊張が入ったり、脱力できてなかったり、呼吸が浅くなっているなどの反応が見られると思います。
なぜ1秒間に5㎝なのか?
触るといってもただ闇雲になでるわけではなく5㎝/secとされています。
それがなぜなのでしょうか。
イギリスの神経生理学者であるグレグ・エシックらによって、
被験者の顔と前腕にたいして素材でなでる課題を実施した際に、3種類の異なる速度で(1秒間に50㎝、1秒間に5㎝、1秒間に0.5㎝)で行いました。
その結果、1秒間に5㎝でなでるのが「気持ちいい」と感じ、また顔と前腕であれば顔をなでられたときに「気持ちいい」と感じるという結果になりました。
また、この「気持ちいい」と感じる5㎝/secでなでられると「C触覚線維」が興奮しているとすることも発見されたようです。
このC触覚繊維の興奮は脳幹、扁桃体、視床下部、島などへ広範囲に投射され、副交感神経が優位になりリラックス効果が得られるのです。
逆に20㎝/secになると交感神経が優位になってしまいます。