物理療法における温熱療法とは
温熱療法とは、身体に熱が加わることで、生理的反応を励起し、循環の改善や疼痛の軽減、リラクゼーションなどを図る治療法です。
熱・電磁波・超音波などのエネルギーを利用して最終的に生体に熱エネルギーを加えます。
治療でよく用いられるものとしてはホットパックや超音波が挙げられます。
温熱療法の逆、寒冷療法の記事はこちら
"温熱療法の種類
温熱療法には具体的な方法としては以下が挙げられます。
- ホットパック
- パラフィン療法
- 赤外線療法
- 超短波療法
- 極超短波療法(マイクロ波)
- 超音波療法
などが挙げられます。
温熱療法での熱の伝わり方による分類
1.伝導熱
熱が高温側から低温側に伝わる現象のことです。
物体により熱伝導は異なり、金属は熱伝導が良く、水や空気は良くない(断熱効果が高い)。
パラフィンは水と比較して熱伝導率が小さいため、52~54℃程の温度でも熱く感じることはないのです。
具体例:ホットパック・パラフィンなど
2.放射熱(輻射熱)
空間や気体中、液体中、真空中を熱が伝導する現象を輻射といいます。
熱源と物体はある程度離れていても、熱源から放出された熱が空間中を伝導して物体に熱を伝えます。
具体例:赤外線療法
3.エネルギー変換熱
超音波や電磁波が身体の細胞を振動させることで熱が発生します。
具体例:超短波、極超短波、超音波療法など
"温熱療法の生理学的作用
温熱療法の生理学的作用としては下記のものが挙げられます。
- 鎮痛作用
- 痙性の減弱
- 精神的な作用で全身の緊張を緩和
- 組織代謝の亢進
- 血管の拡張
- 軟部組織の伸張性増大
細かく説明していきます。
・鎮痛作用
疼痛の刺激を伝える神経は温度刺激を伝える神経より細いため、温度覚の刺激がゲートコントロール機構を介して疼痛の軽減を図ります。
また、血流が良くなることでブラジキニンやヒスタミンなどの発痛物質を除去されることでも疼痛の軽減につながります。
・痙性の減弱
温熱刺激によってγ神経線維活動を抑制し、筋紡錘の感受性を低下させることで、筋緊張が軽減されます。
精神的にリラックスでき、全身の緊張が緩和することで筋紡錘の感受性を低下させているとも考えられでしょうか。
痙縮に関する記事はこちら👇
・精神的な作用で全身の緊張を緩和
温熱によってリラクゼーション効果が得られ副交感神経を刺激し、血流改善・鎮痛の改善につながります。
・組織代謝の亢進
細胞組織の代謝が亢進すると、まず組織の酸素の需要が増えます。
すると熱の運搬と酸素の運搬のために血管が拡張します。
血管が拡張し血流が促進されることで発痛物質の除去などにつながります。
・血管の拡張
温熱の刺激が伝わると、視床下部の温度調節機構の作用で、血管拡張作用のあるヒスタミン様物質の分泌により皮膚の毛細血管が拡張します。
また、温熱されることでのリラクゼーション効果によって副交感神経が優位になることで血管が拡張されるとも考えられます。
・軟部組織の伸張性増大
温熱によって組織の温度が上昇すると細胞内分子のブラウン運動が活性化し、膠原組織の粘弾性の低下につながり、軟部組織の伸張性が増大します。
温熱療法の適応疾患・症状
温熱療法はいくつか種類があり、器具の特性や熱の伝わり方も様々であるため、それぞれ適応は異なりますが、大まかに温熱療法の適応としては下記のものが挙げられます。
- 疼痛
腰痛や打撲、捻挫、腱鞘炎などの筋や関節に起因する疼痛(急性期は禁忌)
- 関節拘縮
軟部組織の伸張性 増大を図る
- 筋スパズム(筋の痙性)
温熱療法の禁忌
温熱療法ではいくつか種類がありそれぞれ禁忌は異なりますが、おおまかに共通した禁忌を挙げてみました。
- あるゆる疾患の急性期
傷病の急性期の炎症を増長させてしまう。
発症してから10日以降の亜急性期からであれば適応
- 悪性腫瘍
腫瘍の病巣を活性化させてしまう
- 感覚障害
温度覚が失われていると火傷する危険性がある
- 出血傾向
温熱による血管拡張作用で止血されずらくなる
- 循環障害・閉塞性の血管疾患
血流が悪いため、温熱されている箇所の熱を拡散できず火傷の危険性がある
- 皮膚の感染性疾患
他の利用者に感染してしまう危険性がある