物理療法を知る!寒冷療法の適応、禁忌、生理学的作用をまとめました

寒冷療法


物理療法における寒冷療法とは

寒冷療法とは、患部に寒冷刺激を与えることで、炎症抑制や鎮痛、代謝の低下を図る物理療法になります。

スポーツなどでの外傷時において急性期の炎症をおさえるために広く用いられます。

野球であればピッチャーが登板後に肩をアイシングしたり、サッカーやバスケで捻挫したときにはすぐにコールドスプレーを使用する場面は多く見かけると思いますが、あれが寒冷療法になります。

氷と冷水があればすぐに実施することができます。

以下に寒冷療法の種類や生理学的作用、禁忌、適応、使用方法を解説していきます。

温熱療法の記事はこちら

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寒冷療法の種類 

寒冷療法には具体的な方法としては以下が挙げられます。

  • コールドパック
  • アイスバッグ
  • クリッカー
  • 冷浴
  • スプレー冷却法
  • 極低温療法

などが挙げられる。

 

寒冷療法の熱の伝わり方による分類

1.伝導冷却

熱の伝導は高温側から低温側に伝わることを利用します。

具体例:コールドパック、クリッカー、アイスバッグ

 

2.対流冷却

具体例:冷浴

 

3.気化冷却

皮膚に揮発性の液を噴霧することで、気化熱を利用して熱を奪います。

具体例:スプレー冷却

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寒冷療法の生理学的作用

寒冷療法の生理学的作用としては下記のものが挙げられます。  

➀一次的血管収縮と二次的血管拡張

➁新陳代謝の低下

➂組織の弾性の低下  

➃疼痛の軽減  

➄筋緊張の減少

 

➀一次血管収縮と二次血管収縮

一次血管収縮

寒冷刺激によって、末梢血管は収縮し血流は減少します。

以下のメカニズムによります。

 

・寒冷→皮膚の温度受容器を刺激→脊髄後根神経節を刺激→交感神経が興奮して血管収縮

・寒冷→ヒスタミンなどの血管拡張物質の分泌が減少→血管収縮 

・寒冷→皮膚の温度受容器を刺激→平滑筋収縮→血管収縮

 

二次血管拡張

寒冷によって組織温が10℃以下になると一次血管収縮に続いて二次血管拡張が起こります。 

動脈吻合部での神経性の反射で二次血管拡張が起こるとされています。

➁新陳代謝の低下

寒冷によって、組織細胞の代謝活動が低下します。血流が減少するため、酵素活性を抑制できます。

関節リウマチでは、膠原酵素や関節軟骨を破壊する酵素の活性化を抑制できるとされています。

急性外傷では、寒冷によって酸素消費やエネルギー消費が減り、炎症を抑制できるとされています。

 

➂組織の弾性の低下

寒冷刺激によって組織温度が低下すると、組織の弾性が低下します。

滑液の粘性が高まるためとされ、関節可動域は減少か抵抗感が強くなります。

 

➃疼痛の軽減

寒冷刺激により、痛みを伝達するAδ線維の神経伝導速度、伝達速度、自由神経終末の興奮性が低下することで疼痛の軽減につながります。

また、ゲートコントロール理論を利用し、皮膚の温度受容器への寒冷刺激が疼痛の伝達を遮断することで疼痛が軽減します。

➄筋緊張の緩和

 寒冷刺激によって、感覚神経と運動神経はいずれも伝導速度は低下します。

寒冷は有髄線維や小径線維の伝道速度を大きく減少させますが、無髄線維や大径線維の伝導速度への影響は小さいとされています。

また、α運動神経よりγ運動線維のほうが寒冷に弱く、γ運動神経の抑制から筋紡錘感受性低下につながり筋緊張が緩和されます。

痙縮に関するはこちら

寒冷療法の適応疾患・症状

➀筋骨格系の外傷などによる急性炎症、浮腫

 急性外傷後10分以内に寒冷療法を実施できると、およそ50%局所血流を減少できるとされており、浮腫の抑制を図ります。

➁局所の疼痛、有痛性筋スパズム

➂中枢神経疾患の痙性

 寒冷刺激によってγ運動ニューロンの活動性低下と筋紡錘の興奮性低下により痙性を抑制します。

➃褥瘡

➄多発性硬化症

 多発性硬化症は、全身の活動による体温の上昇や暖かい環境では症状が増悪してしまいます。

そのため、多発性硬化症の患者さんに寒冷を実施すると症状の改善につながるとされています。

寒冷療法の禁忌

➀心臓および呼吸器疾患

➁心臓および胸部への冷却

交感神経を興奮させ、心臓に負担がかかるためです。

➂高血圧

➃末梢循環器障害

冷却刺激ではまず血管収縮し血流の減少が生じるため、障害を増強させる危険性があります。

➄表在感覚の障害

➅寒冷過敏症(レイノー現象、寒冷アレルギー)

寒冷過敏での皮膚の反応としては、寒冷刺激によって肌が赤か蒼白に腫れ、しばしば痒みを伴います。

➆開放性の外傷

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