全人工股関節置換術(THA)のリハビリのために病態を知ろう
人工股関節置換術(THA)とは 股関節を人工の臼蓋と骨頭に置き換えることで、痛みをとり変形を矯正する方法です。
人工股関節置換術は英語で 「Total Hip Arthroplasty」と表記されるため略して「THA」といわれます。
変形性股関節症や関節リウマチで股関節が変形し、股関節の痛みが強かったり、
可動域制限が強く日常生活に支障をきたす場合や、大腿骨頚部骨折で骨癒合が見込めない場合にTHAにて股関節を人工物に置き換えます。
大腿骨転子部骨折と大腿骨頚部骨折の違いについての記事はこちら👇
"人工骨頭置換術(BHA)と全人工股関節置換術(THA)
人工関節置換術には2種類の方法があります。
全人工股関節置換術:Total Hip Arthroplasty:THA
全人工股関節置換術は、変形性股関節症や関節リウマチ、大腿骨頭壊死、骨折などにより変形した関節を、
金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工の股関節に入れ替える手術のことです。
臼蓋と大腿骨頭を人工の物に置き換えるため、後述する人工骨頭置換術よりは脱臼リスクが増します。
人工骨頭置換術:Bipolar Hip Arthroplasty:BHA
人工骨頭置換術(BHA)は、大腿骨頭のみを人工の物に置換する手術になります。
大腿骨頚部内側骨折などで大腿骨頭が何らかの原因で壊死を起こした場合に、大腿骨頭を切除し、
金属あるいはセラミックでできた骨頭で置換するため、THAと違い臼蓋は置換しません。
THAと比較し、脱臼のリスクは低くなります。
人工股関節置換術(THA)の適応
人工股関節置換手術の適応となるのは、次のような症状の方々です。
- 関節の痛みがひどく日常生活に支障をきたす
- 薬物療法、理学療法、運動療法などでも改善の見込みがない
- 検査などで、関節炎の進行やその他の病気が認められる
人工関節の耐久年数は、およそ15〜20年と言われています。
耐久年数を過ぎた人工関節はとり換えることもできますが、再手術が必要となります。
そのため年齢を60~65歳以上に制限していることも多かったですが、再置換の技術の向上から適応年齢が下がってきています。
"人工股関節置換術(THA)の合併症
- 脱臼
- 深部静脈血栓、肺塞栓症
- 細菌感染(化膿):人工関節は大きな異物であるため、細菌感染が起こりやすい環境です。
- 人工股関節のゆるみ、破損、摩耗
- 周辺の血管・骨・神経への損傷
などです。
手術のアプローチ方法
THAとBHAでの手術でのアプローチ方法は2つあります。
それは前方アプローチと後方アプローチです。
アプローチの違いで脱臼肢位も違ってくるので患者さんがどのアプローチ方法で手術したのかはとても重要になります。
前方アプローチ
大腿筋膜張筋と中殿筋の間を切開します。そのため筋の侵襲は少なく、脱臼リスクも後方アプローチよりは少なくなります。
しかし、切開が少なくなり術野が狭く、手術の難易度が高いため、80~90%は後方アプローチが選択されます。
骨頭が前方を向く伸展と外旋の複合運動が禁忌肢位になります。
後方アプローチ
後方アプローチでは大殿筋を切開し、その次に外旋筋群の転子部の付着部近くを切開します。
そうすると関節包にたどりつくので、それを切って関節に到達します。
後方アプローチでは外旋筋群を切離しますので、後方の支持性が低下します。
骨頭が後方に向く肢位、屈曲+内転+内旋で脱臼しやすくなります。
人工股関節置換術(THA)のリハビリ
THA術翌日~2日
術後翌日から介入しますが、まずはベッドサイドで訓練をします。
・足関節底背屈運動で下肢のポンプ作用を促す
・大腿四頭筋のマッスルセッティングなどの等尺性収縮
など術直後のため痛みが少ない範囲でのROMex、筋力増強訓練を行います。
術後3日~1週間以後
筋力増強訓練:
自動介助から行い徒手による抵抗運動を中心に行います。
脱臼肢位を避けるために初期の訓練は徒手で行うほうが安全でしょう。
ROMex:
変形性股関節症ののちTHAを施行した場合は、術前から股関節伸展制限を呈していることが考えられます。
立位姿勢で骨盤前傾位の方がいますが、股関節屈曲位では殿筋群が働きづらく、跛行につながることもあります。
そのため股関節屈曲筋の伸張が重要になります。
前方アプローチの場合は前方脱臼の恐れがあるので注意します。
起立歩行訓練:
荷重は部分荷重(1/3荷重)から始め、痛みのない範囲で漸増し、4週目には完全荷重へと移行していきます。
荷重制限はDrと確認しながら行っていきます。