大腿骨骨幹部骨折でなぜ膝の屈曲制限につながるのか

大腿骨骨幹部骨折の手術後によく膝関節が全然屈曲しない症例は多くいるのではないでしょうか。

骨折部から離れているし、膝を怪我したり、膝を手術したわけではないのにです。

THAの症例でもみられます。

THAは股関節を手術したのになぜ膝の屈曲制限につながるのでしょう。

 

大腿骨骨幹部骨折術後早期にリハビリ介入したのになぜ屈曲制限になるか

術後早期に介入しているため関節原性の拘縮が起こることはないと思います。

そのため、関節包や関節の副運動は治療ターゲットにはなりません。

関節モビライゼーションは適応にならないでしょう。

大腿骨転子部骨折の術後も膝の屈曲制限が出現します。

大腿骨骨幹部骨折の手術侵襲はどうだろうか??

股関節周囲の手術侵襲や術後の瘢痕形成、治癒過程での軟部組織の癒着が、

膝関節の運動に関与する筋や靭帯に起きていると考えると合点がつきます。

大腿骨骨幹部骨折の手術では大腿外側の腸脛靭帯を大腿近位部と大腿遠位部の2箇所を侵襲して髄内釘を挿入する手術をすることが多いです。

これはカルテで確認しましょう。

 

なぜ大腿骨骨幹部骨折の手術で膝関節の可動制限につながる

さきほど腸脛靭帯が侵襲されると述べました。

しかし大腿外側にある組織は腸脛靭帯だけではありません。

・皮膚

・皮下組織

・筋膜

・腸脛靭帯

・外側広筋

などがあります。

ポイントはこの腸脛靭帯の奥に潜む外側広筋です。

 

外側広筋は膝の伸展筋で、単関節筋です。

腸脛靭帯は大腿筋膜張筋としてとらえて考えると、

大腿筋膜張筋は股関節の屈曲・外転、膝の伸展(膝屈曲30°以上は屈曲筋)に働きます。

 

この外側広筋と大腿筋膜張筋が手術侵襲からの回復過程で癒着して回復していきます

癒着すると本来は隣り合う筋同士は滑走してお互いの収縮や伸張の邪魔をしないようになっています。

しかし、癒着することで作用が異なるこの大腿筋膜張筋と外側広筋は邪魔しあうようになります。

 

また、筋同士の癒着だけではなく、皮膚と皮下組織と筋膜との癒着も考えなくてはなりません。

皮膚の下でも筋が滑走しないといけないので、これができないと膝の動きの制限となります。

 

大腿骨骨幹部骨折術後における評価

自動運動検査

Extension lag(膝の完全伸展不可)が認められることが多いです。

他動運動検査

もちろん関節可動域制限はROMで評価します。

またこのときに最終域での抵抗感を感じておきます。

痛みもどこに訴えるかも大事です。

大腿骨骨幹部骨折の術後の症例では、膝屈曲時の痛みを術創部と外側広筋部に訴えることが非常に多い印象があります。

 

大腿四頭筋と腸脛靭帯の触診

大腿の遠位部を大腿四頭筋から腸脛靭帯に向けて擦るように母指を移動させていくと、

健常であれば大腿四頭筋と腸脛靭帯の境目がややくぼむ感じでわかります。

また腸脛靭帯のエッジを触知できます。

しかし術後の症例ではこの境目が触知しづらく、エッジもわからなくなっていることが多いです。そして硬いです。

腸脛靭帯を把持して前後に滑走することも困難です。

 

リハビリ介入=腸脛靭帯のモビライゼーション

これだけではないですが、効果的なものとして挙げられます。

腸脛靭帯を把持して外側広筋の上を前後に滑走させるようにモビライゼーションしていきます。

また、腸脛靭帯の溝を指で圧迫しながらそれを停止側から起始側に滑らせていきます。

 

参考図書・教科書