足関節背屈制限の原因!ケーラー脂肪体の評価と治療(リハビリ)



足関節背屈制限って問題点として挙がることが多いですよね!
 
 
『背屈制限は下腿三頭筋だ!』なんて新人のころは思ってましたけど
 
足関節周囲には筋以外にも足関節背屈制限となりえる重要な組織があります。
 
それが脂肪体です!
 
 
膝蓋下脂肪体は有名というか膝に疾患を抱える患者さんの場合は必ず診るポイントですね!
 
実は足関節の脂肪体も足首にとって欠かせない重要な組織です。
 
今回はそんな足関節の脂肪体について解説していきます!
 
 
 

脂肪体(ファットパッド)の構造と役割

 
 
脂肪体と聞くと、「そんなのないほうがいいじゃん」とか「太る」とかそんなイメージがあると思いますが、
 
この脂肪体はあると便利な脂肪体です
 
 
脂肪体はもちろん脂肪のことで、英語ではfat pad(ファット パッド)といいます。
 
 
脂肪体として有名なのは膝蓋下脂肪体でしょう。
 
そして足首にあるkagers fat pad(ケーラー脂肪体)も有名です
 
 
 
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足関節周囲にある脂肪体(ファットパッド)とは?

出典https://balletlab.jp/

 
足関節周囲には前述したkagers fat pad (ケーラー脂肪体)とあわせ3つの脂肪体が存在します
 
kagers fat pad (ケーラー脂肪体)
 
②距骨前脂肪体
 
③踵骨下脂肪体
 
 

ケーラー脂肪体:Kagers fat padKFP

 
まずは代表的なKager’s fat padです。
 
アキレス腱と長母趾屈筋腱、踵骨周囲で構成される空間をkagers triangleと言い、
 
その空間を埋めるように脂肪組織が存在しているのです。
 
さらにkagers fat pad (ケーラー脂肪体)は3つのパートにわけられます
 
①    アキレス腱関連領域
 
②    長母趾屈筋関連領域
 
③    踵骨滑液包ウェッジ
 
の3つにわけられます。
 
 
役割としてはアキレス腱のパートではアキレス腱に入り込む血管の保護、底屈中の滑液包ウェッジの運動への寄与、滑液包内の圧変化の調整が挙げられます。
 
 
ケーラー脂肪体に影響がでる疾患としてアキレス腱断裂や足関節骨折があります。
 
ケーラー三角はアキレス腱・踵骨上縁・長母趾屈筋によって構成されていますが、
 
この周囲が損傷することによる炎症や出血、固定療法によって脂肪体が固くなってしまいます。
 
 
 

距骨前脂肪体

 
 
距骨の前にも脂肪体があり、距骨前脂肪体といいます。
 
 
距骨前脂肪体の動きとしては、足関節の背屈にて脂肪体が関節内に入り込むような動き、
 
底屈にて関節の外にでるような動きになります。
 
 
距骨前脂肪体の柔軟性低下につながるのは足関節骨折でしょう。
 
 
この骨折の場合など、足関節を固定する必要があると不動による脂肪体の拘縮から
 
底背屈運動時の脂肪体の動きが阻害され、インピンジメントにつながることが考えられます。
 
 
 

踵骨下脂肪体

 
踵骨下脂肪体はその名の通り踵骨の下に存在します。
 
踵骨荷重時の衝撃吸収の役割があります。
 
 
踵骨下脂肪体は踵骨の下に存在する脂肪体であり、歩行時のICではかなりの荷重が加わる部分になります。
 
 
そのため長距離を歩くと踵骨下脂肪体に負荷がかかり痛みにつながることがあります。
 
 
繰り返し踵骨下脂肪体に衝撃が加わり、脂肪組織の拘縮・組織損傷後の瘢痕治癒での柔軟性低下などにより
 
疼痛が出現する「有痛性踵パッド」という疾患もあります。
 
 

kagers fat pad (ケーラー脂肪体)の拘縮で生じる影響

 
ケーラー脂肪体はアキレス腱や長母趾屈筋に隣接することから脂肪体が拘縮すると足関節の機能に影響を及ぼすことになります
 
 
 
ケーラー脂肪体の拘縮で生じる影響
・足関節背屈制限
・底屈時のアキレス腱の滑走性の低下
・下腿三頭筋や長母趾屈筋の滑走性低下
・アキレス腱の痛み
 
 
臨床経験上、足関節に炎症がでる何らかの怪我、捻挫、骨折後の固定などでケーラー脂肪体の硬さがでることはかなり経験します。
 
 
また背屈制限の要因のひとつとして長母趾屈筋の柔軟性低下・滑走性低下がありますが、
 
脂肪体が原因で長母趾屈筋の硬さにつながっている可能性も考えられます。
 
 
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脂肪体の拘縮に関する文献

 
 
脂肪体の拘縮の病理学変化を報告している文献が
 
松崎太郎氏の『ラット膝関節拘縮モデルにおける膝蓋下脂肪体の病理学的変化』(石川県理学療法学雑誌121):11-14,2012
 
で膝蓋下脂肪体の報告ですが、参考になります。
 
 
整形外科リハビリテーション学会京都支部スタッフブログ(seikeigeka.blogspot.com)にて
こちらの文献を要約して紹介していました。
 
研究モデルは制約を加えずに飼育した正常群、2週間関節を固定した後に2週間自由飼育を行った再可動群、2週間関節固定を行い不動化した固定群の3群に分けられたラットです。
 
これら3群のIFPを顕微鏡で観察しています。
 
顕微鏡で観察していくと固定群、再可動群では脂肪細胞が萎縮しており、再可動群においては脂肪細胞の萎縮に加えてコラーゲン線維の増加がみられたと報告しています。
 
今回の検討では可動域測定、運動療法の介入がされていないため、可動域との関連、運動療法の有用性はわかりませんでした。
しかし、今回の結果から1度拘縮したIFPは再度可動性をだしても正常な面積には戻らず、線維性の組織が増殖すること、2週間の不動でIFPが拘縮することが分かりました。
 
 
 
 

背屈制限の原因!kager’s fat pad (ケーラー脂肪体)のリハビリ【評価と治療】

 
 
Kagers fat padKFP)はエコーを用いて動態を評価することができますが、
 
エコーがない施設で働いているとエコー検査はできません。
 
そのため、徒手的にアキレス腱の深部にある脂肪体を触診し左右差等で柔軟性の評価をします。
 
 
ケーラー脂肪体の評価と治療は同じ手技になります。
 
 
ケーラー脂肪体の位置はアキレス腱の深層にあるため
 
触診ではアキレス腱と内外果の中間あたりを母指と示指ではさむようにつまみます。
 
 
まずは圧迫して硬さのチェックとつまんだまま、脂肪体を側方に動かして硬さ・柔軟性のチェックをします
 
関節可動域のように参考可動域みたいな定量的なものはないので
 
左右差を確認しましょう
 
 
 

治療

 
ケーラー脂肪体の治療も触診とほぼ同じです。
 
足関節は中間位かやや底屈位にすることで、アキレス腱を緩ませて、脂肪体が動かしやすいポジショニングとします。
 
 
はやく動かすよりは片方向ずつ大きく動かして10数秒とめるを繰り返していると硬かったのが徐々に緩んでくるのを感じられると思います!
 
※表面のアキレス腱を動かすことが多いので、内外果とアキレス腱の中間を目安に脂肪体をつまみましょう