私も偏平足なんですが、とくにそれによって痛みがあるとか、なんらかの機能不全みたいなことは実感はしていません。
患者さんでも多く偏平足の方をみかけます。
足のアーチ構造が人にどんな影響を及ぼすのか、また評価などを調べたので解説していきます。
内反膝もアーチも崩す原因になります。膝OAでなぜ内反モーメントが増大するのかの記事はこちら
足が疲れやすい?偏平足の病態
偏平足は一般的には内側縦アーチが減少して、いわゆる「土踏まず」がベタッと床について状態を指すでしょう。
また、ただ内側縦アーチの減少だけではなくほとんどは足外反を呈していて、外反偏平足の状態であることが多いと思います。
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偏平足の分類
●原因疾患が明確でない偏平足(flexible flatfoot:FFF)
拘縮や関節可動域制限がないか、あってもその影響が少ない偏平足
●原因がはっきりしている偏平足(pathological flatfoot:PFF)
拘縮や関節可動域制限がはっきりとあり、二次的に偏平足を呈している
原因がはっきりとしていない前者の偏平足が90%以上を占めているとされています。
足のアーチ構造
足はおおよそ成人で縦26㎝、横幅7~8㎝の大きさでしょうか、その小さい面積で重たい体を支えています。
足は距骨・踵骨・舟状骨・楔状骨・中足骨・基節骨・末節骨と靭帯・筋・腱・そして神経で支えていることになります。
重たい体重を支えながらも、バランスをとり、衝撃を吸収して、歩行時には推進力も担います。
体重を支えるからといって頑丈すぎても、衝撃吸収や推進力の面では不利になるため、その矛盾点を解消するために足のアーチ機構が必要になります。
内側縦アーチを形成するもの
内側縦アーチの形成には、骨・靭帯・筋が関与しています。
靭帯に関しては、
・底側踵舟靭帯
・距踵靭帯
・楔舟靭帯
・足根中足靭帯
などが関与しています。
筋に関しては、
・後脛骨筋
・前脛骨筋
・長母指屈筋および長趾屈筋
・母指外転筋
が関与しています。
内側縦アーチと後脛骨筋腱の関連性
上記で挙げた内側縦アーチを形成するものの中でも、後脛骨筋腱が内側縦アーチを形成するうえで非常に重要な働きをしています。
後脛骨筋は前足部を回内させる作用があり、前足部が回内すると踵立方関節の運動軸が直交するためロックされて動きにくいrigidな足を作ってくれます。
関節の運動軸が直交していないと関節はロックされないので動きやすいflexibleな足となります。
後脛骨筋が機能不全で前足部を回内できず、flexibleな足になっている場合、その状態で状荷重をすると、体重の負荷が骨関節部分ではなくスプリング靭帯などの靭帯部分により多くかかってしまいます。
それによって、靭帯にストレスがかかり、靭帯の損傷から後天性の偏平足につながります。
"扁平足が身体に与える影響
内側縦アーチが低下することでの身体機能の変化に関しては、
野田は小学生(10~12歳)を対象とした運動能力の調査において、立ち幅跳びなどの跳躍能力、50m走などの走能力において土踏まず(内側縦アーチ)未形成者では形成者に比べて運動能力が劣ることを報告している。
さらに、扁平足ではショック吸収能が劣るため疲れやすく、長時間または長距離の歩行や走行などで疼痛が発生しやすいなどの事実も報告されており、種々のスポーツ傷害の一因とされている。
野田 雄二:足の裏からみた体 講談社 東京 1998
また、
尾田はアーチが低いほど足趾筋力が高かったと報告している。
これは、骨格が靭帯性に結合されて形成される足部アーチが低下している場合、外力からの衝撃を吸収しきれないために、足趾筋力を用いて代償しようとする結果ではないかと考察している。
尾田 敦:扁平足が運動能力に及ぼす影響に関する実験的研究 仙台大学大学院スポーツ科学研究論文集Vol.5,2004.3
さらに、high archではウィンドラス機構が有効に作用し、効率的な筋出力が発揮されていると考えられるが、
Low archでは非効率的な筋出力が要求されており、結果的に筋疲労を招くことになると推測される。
筋電図学的解析においても扁平足では母趾外転筋などの固有筋の活動が増加していることが示されている。
扁平足の評価法
偏平足の評価方法としては
Brodyが考案した舟状骨の沈み込み具合で評価するNavicular Drop(以下ND)があります。
舟状骨にペンなどでマーキングしておき、非荷重時と荷重時における舟状骨の沈み込みの長さを測り定量的に計測するものです。
正常:沈み込んだ長さ<10mm
異常:沈み込んだ長さ>10mm
とします。
扁平足に対する治療法・リハビリ
タオルギャザー
よく足部や足趾のエクササイズとしてタオルギャザーを行うことがあるでしょう。
もちろんこの偏平足に対してもタオルギャザーの効果が報告されていますが、少し注意が必要になります。
2~5趾および3~5趾による底屈エクササイズは内側縦アーチを増加させると報告されています。
この結果から内側縦アーチの促通を目的とする場合、母趾以外の足趾に着目すべきことが示唆されました。
また、後脛骨筋は前足部を回内させるので、単純に考えると母指球で前足部が回内するようなエクササイズを選択すればよいのではないかと思います。
しかし、城下らによると、このエクササイズでは長腓骨筋の外返しの作用がメインとなってしまい、
内側縦アーチが低下したと報告されています。
足底板による靭帯や後脛骨筋の負荷の軽減
足底板を使用することで、内側縦アーチを保持してアーチを維持し靭帯の負荷を軽減するさせます。
この際は、踵骨を中間位あるいはやや内反位に保持し前足部をやや回内させ距骨下関節、
ショパール関節をロックしてrigidな足にできるように足底板を作れると良いでしょうか。
参考図書・教科書