変形性関節症(膝OA)と疼痛の関係性
変形性膝関節症(knee osteoarthritis:膝OA)の症状で一番多いのは疼痛ではないでしょうか。
膝OAの重症度の初期であればこわばり感からから始まりますが、次第に疼痛が出現してきます。
膝OAの病態とリハビリの記事はこちら
疼痛の表現としては
「うずく」
「ズキズキする」
が臨床で経験していて多い印象があります。
疼痛の部位では膝関節の内側や外側などに圧痛が出現します。
進行すると次第に運動時痛や荷重時痛が出現し、特徴的なものとして動作開始時の疼痛があります。
重度の場合は夜間痛、安静時痛を生じることもある。
また良く「天気が悪いと痛くなるの」と患者さんから聞くことがありますが、大気圧と関節内圧との圧力勾配の変化で、
大気圧が下降すると関節痛が発生することもあります。
関連記事はこちら天気と疼痛との関係性はあるのか?
"変形性膝関節症での痛みは関節軟骨が原因ではない?
膝OAの病態生理として、関節軟骨の変性と摩耗を主体とした退行性変化とされています。
しかしこの関節軟骨には神経線維は存在しないため、関節軟骨が摩耗されて痛みが生じているわけではないとされています。
変形性膝関節症での痛みはどこからでてる?
関節軟骨に神経線維が存在しないため、膝OAでの疼痛は関節軟骨以外の組織やメカニズムによって痛みが出現していることがわかります。
ではどこからなのかというと、関節軟骨の下部にある軟骨下骨には骨髄からの神経線維が伸びているため、
軟骨の変性と摩耗による刺激が軟骨下骨に伝わり疼痛が生じさせているのです。
また膝OAが進行すると骨棘形成がなされ、関節構成体に存在する侵害受容器を刺激し、疼痛が出現します。
そのため関節が変形しても侵害受容器を刺激していない場合は必ずしも疼痛が出現するわけではないのです。
X線画像で関節の変形がみられても40%の症例が疼痛を認めないとされる報告もあります。
滑膜の炎症
関節構成体が変性することで、組織破壊産物の刺激作用によって滑膜炎症が起こるとされます。
滑膜には神経終末が多数存在するため、神経ペプチドであるサブスタンPやカルシトニン遺伝子関連ペプチドが多量に蓄積されています。
滑膜に刺激が加わると
刺激に対して神経が応答し、サブスタンスPの作用によって新生血管から漏出したT細胞が神経終末周囲に集積・増殖して、滑膜炎が成立すると考えられます。
またこのサブスタンスPは血管内皮細胞にも直接作用して血漿成分の血管漏出を促進し、
これによりブラジキニンなどの内因性発痛物質が周囲に漏出します。
これと、血管周囲の増殖した肥満細胞から放出されたヒスタミンにより、
疼痛閾値が低下した神経終末が刺激され、疼痛が誘発されるのです。
滑液が多量になる
滑膜が炎症を起こすことで、滑膜から分泌する滲出液が関節腔内に多量に溜まってしまうと、
関節が腫脹し関節包に分布する疼痛受容器が機械的刺激を受けて疼痛が生じます。
この滑膜の炎症によって関節内圧が高まることで、正常の関節では反応しない非活動的侵害受容器を刺激して疼痛の伝達につながります。
"膝OAリハビリの参考図書・教科書