パーキンソン病の病期・ヤール分類別にリハビリの目的、内容をまとめました

パーキンソン病のリハビリの考え方

近年の研究などにより発症メカニズムが解明されつつあり、薬物療法や手術療法などの治療に大きな進歩がみられており、パーキンソン病の機能的な予後は改善されてきています。

しかし、完全に原因が解明されたわけでもなく、薬物も長期の服用による副作用が出現したり、加齢による身体機能の低下の影響もあるため、機能障害は徐々に進行していきます。

パーキンソン病の進行とあわせて身体活動量が低下することによる二次的な機能障害は、ADLやQOLを著しく障害します。パーキンソン病によってもたらされるADL障害は、無動や姿勢反射障害などの陰性徴候と相関するとされ、そのため運動機能の維持のためには病期(重症度)に応じたリハビリテーションが重要になります。

実際にはリハビリが介入開始されるのは、発症してから期間がたち、姿勢反射障害が出現して転倒するなどが起きてからリハビリが関わるということが多いでしょう。

それは服薬によって症状の進行を抑えることができているからであり、パーキンソン病の性質上、時間とともに運動機能障害は必ず生じるため、リハビリの開始時期とその内容についての検討が必要になります。

HoehnYahr(ホエン・ヤール)の重症度別のリハビリ

パーキンソンの病のリハビリテーションはHoehn&Yahrの重症度分類の重症度に応じて治療目標と介入方法が異なります。

HoehnYahrの重症度のリハビリ

Yahr分類Ⅰ~Ⅱでは運動症状は軽度であるため、薬物治療にて症状がコントロールされていることが多いでしょう。

日常生活動作や入院生活に介助を必要とすることはほとんどなく、身辺動作は自立期にあります。

そのためこの時期に積極的な理学療法の対象になっていないのが現状でしょう。

この病期では理学療法の目標は、健康増進と心肺機能や筋力、筋伸張性の維持、日常生活動作場面での無動への対応、転倒予防と活動量増加の取り組み、社会生活の継続になります。

この時期であれば自分でホームエクササイズをやることは可能なため、その指導が重要になってきます。

HoehnYahrの重症度~のリハビリ

Yahrの分類Ⅲ~Ⅳでは、疾患から由来する症状から、長期間の服薬による副作用の影響、二次的要因による症状など、複合的にもたらされる症状のすべてを考慮する必要があります。

この時期では特にすくみ足などの症状がでやすくなっているため、転倒に十分に注意するひつようがあるし、症状も一日のなかで程度に変動がみられ日常生活に与える影響が大きいです

評価・治療を行っていきますが、その際には服薬などの理学療法士がアプローチしても変化が期待できない部分と、また期待できる部分を明確にしておくことが、治療プログラムの立案にも必要になってきます。

筋力低下や関節可動域制限など二次的要因による症状や、バランス障害や歩行障害などの複合的要因による症状はリハビリテーションにより改善は可能になります。

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HoehnYahrの重症度のリハビリ

Yahrの分類Vの重度の患者では、運動機能だけではなく、呼吸や嚥下、認知機能なども評価・治療していく必要があります

この時期は、長期の服薬によりL‐dopaの効きが低下してしまうwearing off現象やon off現象のoff状態が日中の多くを占めるようになります。

また、認知機能障害や身体機能、精神機能の低下が日常生活活動を著しく低下させ介護が必要になり、介護者には多くの身体的・精神的負担がかかります。

パーキンソン病に対するリハビリテーション

パーキンソン病体操

立位・座位バランスも考慮して患者さんに合ったエクササイズを選択します。

関節可動域訓練

パーキンソン病患者さんは全身的な屈曲姿勢を呈し、変形や拘縮を起こしやすいです。

そのため、パーキンソン病体操によって自動的な姿勢矯正と関節可動域維持、またセラピストや家族による他動的な関節可動域訓練も必要になります。

筋力増強訓練

立位・座位・歩行時の安定性向上のため、特に抗重力筋群の筋力を向上させることが重要です。

しかし、注意する点として、パーキンソン病では全身的なミトコンドリア異常が示唆されているため、正常人と比較して同じ運動をしても2倍の運動量が必要になるとされています

また、L-dopaの影響により筋の生理学的変化から仕事量を減少させるとされ、そのために負荷量の調整が考されなければいけません。

バランス練習

パーキンソン病患者さんでは後方へのバランスの不良がよくみられます。日常生活ではドアの開閉から、物の出し入れ、浴槽の出入りなどに大きく影響し、環境の整備も必要になってきます。

Yahr分類のⅠの軽度だとしても、積極的に行い、重症になるにつれ難易度も調整しつつも積極的に行います。

呼吸運動

パーキンソン病では全身性の屈曲姿勢を呈することが特徴で、そのため拘束性の換気障害を起こしやすくなります

パーキンソン病体操や関節可動域訓練などともあわせて胸郭の拡張、呼吸筋の筋力増強も図ります。

嚥下練習

パーキンソン病では高率で嚥下障害を認めます。

舌の可動性の低下から食塊の形成不全や咽頭への送り込みの遅延がみられ、口腔内残渣がみられます。

また、フォワードヘッド姿勢により、顎が前方に突き出るような姿勢で舌根部から咽頭後壁の距離が遠くなり、咽頭煽動が困難になります。

適切な姿勢の保持から、舌や頭頸部の運動、嚥下体操を行っていきます。

基本動作練習

寝返りや起き上がりでは、パーキンソン病の患者さんはよく体幹や骨盤の回旋運動がみられない動作パターンが多いでしょう。

可動域訓練の意味合いも含め回旋運動を取り入れた動作パターン練習も必要ですが、それが、訓練ではできても生活場面まで汎化されないことも多いため、回旋パターンに執着せずその人にあった環境設定と動作練習が必要になります。

歩行練習

Yahr分類Ⅰ~Ⅱでは、散歩などを運動量を落とさない目的で日課に取り入れるようにします。

パーキンソン病患者さんに特徴的なものとして小刻み歩行、突進現象、すくみ足、手の振りの欠如などが挙げられます。

メトロノームなどのリズムにあわせて歩行する、床面の目印をまたぐように歩行するなどの工夫をしましょう。

すくみ足に対するリハビリは下記に記述しています。

応用歩行練習

方向転換:その場でまわるのではなく、大きく弧を描くように回る

下り坂:加速歩行になりやすく自分でとまることが困難なため転倒の危険が高い。方向転換時同様に大きく弧を描きながらスキーで斜面を滑降するような下り方にする

階段昇降:平地歩行より容易に行えるケースが多い。しかし、店頭の危険はあるため練習では注意が必要。

狭い場所の歩行:狭い場所になるにつれて、すくみ足が出現することが多い。遠くを見るようにして歩行させるようにする

 

パーキンソン病でのすくみ足に対するリハビリ

すくみ足に対しては外部の刺激によって解除しやすいというのは広く知られていると思います。

すくみ足は、記憶に基づいて行われる内発的な随意運動時に働く補足運動野の機能低下が関連しているとされています。

外的刺激に基づく随意運動は運動前野が関連し、これは障害されていないためパーキンソン病患者のすくみ足に対しては外的刺 激を利用した歩行練習が有効であるとされているのです。

すくみ足の解除方法として

➀靴のヒールを高くすることで前方荷重を促す

➁リズム、聴覚刺激

 メトロノームや、自分で「1、2、1、2」と声にだしながら足踏みして一歩目を大きく踏み出すなど

➂視覚刺激

床に目印を置き、それをまたぐように歩いてもらう。

床の目印は梯子状に進行方向に対して垂直に、コントラストははっきりした色で、テープを貼るようにする。

リハビリではセラピストの足をまたいでもらってもよい。

視覚刺激は歩幅の改善に有効で、聴覚刺激はリズムの改善に有効であるとされているため、目的にあわせて選択してもいいのではないでしょうか。