「すくみ足」は、パーキンソン病患者に特有の歩行様式であり、歩き始めの一歩がなかなか出ない状態が特徴です。
これは、足が地面に張り付いたように感じられるためです。
この状態では、足首から体にかけての筋肉が強く持続的に収縮しており、筋肉が常に緊張状態にあります。
その結果、体が一本の棒のように固くなってしまいます。
今回は、すくみ足歩行のリハビリに有効とされる方法についてもご紹介します。
さらに、パーキンソン病患者に見られるすくみ足の原因や歩行分析についても詳しく解説します。
すくみ足の原因とパーキンソン病について
すくみ足は、長期間ドーパ製剤を投与したことに起因する症状であり、パーキンソン病固有の症状ではないと報告されています。
つまり、パーキンソン病患者が薬を飲み続けることで起こる副作用の一つであると考えられています。
また、パーキンソン病には以下のような性格の人が罹患しやすいと言われています。
・真面目
・几帳面
・融通がきかない
なお、喫煙者が少ないことも知られています。その他、遺伝性や若年性のパーキンソン病が稀にみられますが、通常は遺伝性では発症しません。
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すくみ足の特徴
パーキンソン病患者の歩行には、すくみ足や小刻み歩行が見られることが特徴です。
すくみ足は、歩き始めや歩行中に足の裏が地面にくっついたように感じて歩けなくなる状態です。
一方、小刻み歩行は前のめりで歩き、次第に早足になることが特徴です。
パーキンソン病でのすくみ足が生じる場面は、以下のように報告されています。
– 歩行開始時: 8%
– 方向転換時: 45%
– 狭い場所を通る時: 25%
– 目標に近づいた時: 18%
また、足元に跨ぐものを示すと歩けたり、平地ではすくみ足のために歩行ができなくても、階段の昇降は可能であることも知られています。
正常歩行とすくみ足を呈するパーキンソン病の歩行の違い
正常歩行の人
安静立位時には、下腿三頭筋以外の筋活動はほとんど見られません。
また、歩行時の筋活動は次のように分類されます。
脊柱起立筋は立脚相と遊脚相の移行期に活動し、前脛骨筋は立脚初期と遊脚相に活動します。
下腿三頭筋は立脚後期に活動します。
さらに、脊柱起立筋は歩行時に体幹の過度な屈曲を制限し、体幹をさまざまな方向に偏位させる働きを持っています。
すくみ足歩行を呈するパーキンソン病患者
安静立位では、下腿三頭筋、脊柱起立筋、前脛骨筋が高い活動を示しており、筋肉の活動による拮抗筋への相反抑制が不十分になります。
このため、その直後の歩行においても、全歩行周期を通じて持続的に高い筋活動が認められます。
これにより、左右への重心移動が小さくなります。
脊柱起立筋は全歩行周期を通じて持続的に高い活動を示し、その結果、体幹は棒状となります。
体幹が棒状化することで重心移動が十分にできず、下肢は体重支持を余儀なくされ、振り出しが困難になります。
さらに、体幹の棒状化により重心移動が小さくなり、足関節の固定化を招きます。
このことが、すくみ足や小刻み歩行を引き起こしていると推察されます。
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【パーキンソン病】すくみ足にたいするリハビリ、治療
すくみ足歩行を呈するパーキンソン病患者に対して、高い活動を示している下腿三頭筋、脊柱起立筋、前脛骨筋の筋活動に有効なアプローチが報告されています。
この方法では、まずリラクゼーションによりこれら3つの筋肉の活動を低下させた後、足踏みを繰り返すことで収縮と弛緩という相動性の活動を促します。
これにより、左右への重心移動が大きくなるとともに足関節の可動性が広がり、下肢の振り出しが容易になります。
その結果、すくみ足や小刻み歩行が一時的に改善されます。
また、すくみ足に対するリハビリとして、パーキンソン病で認められる逆説的歩行を利用する方法もあります。
逆説的歩行を誘発するために、目の前に横線を跨がせる視覚刺激やメトロノームによる聴覚刺激などが用いられます。
視覚や音による刺激で逆説的歩行を誘発することで、脳内フィードバック機構が賦活化され、活動の高い筋肉活動の軽減が期待されます。
しかし、これらの方法には個人差が大きく、効果の持続性がないこともあるため、さらなる研究が求められます。