ラテラルスラスト(外側スラスト)とは
外側スラストとは、歩行立脚期においてみられる膝関節の外側動揺性のことです。
「ラテラルスラスト」とも呼ばれています。
変形性膝関節症で膝関節の内反変形を呈している患者さんに主にみられる現象です。

引用元:沖縄県医師会HP http://www.okinawa.med.or.jp
外側スラストは瞬間的に膝関節の内反を助長し、そのまま歩行を続けると内反変形・膝関節安定性助長や疼痛の悪化につながるため、予防・治療が重要です。
原因としては脛骨の外旋・内反を起こしている筋の弱化や筋活動のアンバランス、
膝関節や膝関節以外のアライメント不良による運動連鎖も関わってきます。
そのため、治療は脛骨の内旋の筋活動を促したり、アライメント修正などになります。
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ラテラルスラスト(外側スラスト)の原因
ラテラルスラストの大きな原因は、膝関節の安定を膝関節の外側支持組織であるITB(腸脛靱帯)に預けてしまう内部モデルを構築してしまっていることなのです。
本来は外側側副靭帯が外側の支持を担っていますが、外側スラストが出現している方はITBが主役になっています。
ITBは脛骨の外側部に付着しており、腸脛靭帯の張力は脛骨外側部を牽引するように働き、下腿の外旋・外方に変位させます。
ではなぜ腸脛靭帯がはたらきやすくなっているのでしょうか。
膝関節アライメントの問題
変形性膝関節症が進行すると膝関節の伸展可動域が制限されてきます。
膝関節の靭帯は屈曲角度により内反制御する組織が異なるのですが、
膝関節の屈曲0~10°程までは外側側副靭帯(LCL)が膝関節の内反制御を担い、膝屈曲10°以降は腸脛靭帯が内反制御を担います。
そのため、膝関節の伸展が制限されると腸脛靭帯が過活動となるのです。
また、ACLやPCLに関しても膝伸展位と脛骨が内旋すると張力がかかりやすいのですが、
変形性膝関節症で膝屈曲位・脛骨外旋位でゆるんでしまい、膝関節の安定を腸脛靭帯に頼らざるを得なくなります。
しかし、膝OAでは、、、立脚初期のTA、大殿筋、大内転筋の活動が低下する為にこのねじれが起こらずに膝が不安定な状態となりラテラルスラストが起こると言う訳です。
筋の問題
健常の方の歩行では、接地した瞬間に大内転筋や殿筋が収縮し大腿の外旋と、
前脛骨筋による下腿の内旋により、膝関節の内旋が起き、ACLとPCLの張力がかかるため、膝関節の安定が図られます。
しかし、膝OAでは立脚初期のTA、大殿筋、大内転筋の活動低下により、
膝関節の内旋が起きずこの状態では、ACLとPCLの中心靭帯安定化機構は働かず関節は不安定な状態で荷重を受け止めることになります。
膝関節以外のアライメント不良
膝関節以外の骨アライメントの不良による運動連鎖も原因になります。
腰椎の後弯姿勢から骨盤後傾→股関節外転・外旋→下腿外旋といった下行性運動連鎖、
距骨下関節回外→下腿外旋といった上行性運動連鎖が膝関節の内反モーメントを高めていることも考えられます。
ラテラルスラスト(外側スラスト)がなぜ悪いのか
簡単に言うと変形性膝関節症が進行します。
膝関節の内反モーメントの増大により、膝内側裂隙狭小化だけでなく、外側関節裂隙の拡大と外側支持組織の伸張が起こります。
膝関節の適合性が悪くなり、外側スラストの増悪、疼痛の増悪、可動域制限につながります。
可動域制限が起こると、膝関節の靭帯による安定が損なわれ、さらに関節適合性が悪くなるという悪循環に陥ります。
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ラテラルスラスト(外側スラスト)の治療
外側スラストは膝関節の外部内反モーメントの増大によるものなので、
簡単にいうと内反モーメントを減少させることが治療の目的になります。
対応・治療としては大きくは以下の4つになるのではないでしょうか。
①足底板の使用
ラテラルウェッジをインソールとして使用し、膝関節の内反モーメントを減少を図ります。
②膝サポーター
膝サポーターで、疼痛軽減したとする報告もあるが作用機序などは明確になっていない。
③筋による膝関節の安定
・大腿四頭筋(特に内側広筋や中間広筋)の機能改善
heel contact時の膝関節伸展位をつくり、靭帯などによる膝関節の安定を保障していきます。
・大殿筋、中殿筋、内転筋の機能改善
股関節・骨盤の側方安定性に寄与する臀筋、内転筋の機能不全では股関節の安定を大腿筋膜張筋が代償してしまうため、
臀筋、内転筋の機能改善が重要になります。
④アライメントの修正
中臀筋は股関節が中間位で働きやすいため、骨盤前傾や後傾の姿勢だと中臀筋以外で股関節に安定を与える事になり、
大腿筋膜張筋が頑張ってしまうことが多いです。
大腿筋膜張筋が脛骨を外側に牽引してしまうのは骨盤のアライメント不良も関係しているので、
膝だけではなく腰椎・骨盤などのアライメントにも注目する必要があります。