ACL(前十字靭帯)損傷のリハビリ!原因、症状、診断、治療まとめ【理学療法】



ACL(前十字靭帯)の役割

ACLは大腿骨外側顆の顆間窩面後方部から起始し、脛骨顆間窩隆起の前方に停止します。

役割としては、大腿骨に対する脛骨の前方移動を抑制することです。

膝関節伸展位で最も緊張するため膝関節過伸展も抑制し、下腿の内旋も抑制します。

 

膝関節伸展位で緊張するため、膝OAなどで膝屈曲位で拘縮を呈していると膝関節の安定性が損なわれます。

 

安定性が損なわれていると歩行時のラテラルスラストにもつながります。

ラテラルスラストの記事はこちら

 

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ACL(前十字靭帯)損傷の原因・受傷機転

出典:http://www.reha-kaiseikai.or.jp/

受傷は直達外力による接触型と非接触型のタイプがあります。

非接触型の方が多いとされています。

 

・方向転換(cutting)

・着地時

・減速や停止

 

などの動作でknee in / toe outで膝を捻っているときに受傷することが知られています。

 

ACL損傷の症状

受傷時に膝関節の激痛とACLの断裂音を感じることが多いです。

 

また、歩行困難となり損傷後数時間で関節血症により関節腫脹が著明になります。

 

陳旧例ではジャンプの着地、切り返し、ストップ動作で膝くずれが起こります。

 

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ACL損傷の診断

問診

「膝がカクンとなる」「膝がはずれる」「プチっと音がした」などを訴えます。

Lachman test(ラックマンテスト)

背臥位にて膝屈曲20~30°位にて大腿骨遠位部を固定して、下腿近位部を把持して斜め前方に引き出します。

 

正常の膝であれば最終域でとまる感覚がありますが、

ACL損傷例では脛骨の引き出し量が大きく、最終域感が軟性なものになります

 

前方引き出しテスト

膝を90°屈曲位として足部を固定します。検者は脛骨近位部を把持して前方に引き出します。

Lachman testより陽性率は低いです

MRI

大腿骨外顆と脛骨外顆後方に骨挫傷を認めたときは、ACLが断裂し亜脱臼した証拠となります。

 

ACL(前十字靭帯)損傷の治療

スポーツ活動を望まない中高年者には装具装着と筋力増強を中心にした保存療法で経過をみます。

 

スポーツ活動を望む若い患者には手術による再建術を選択します。

 

また、陳旧例でも日常生活で膝崩れを繰り返している場合は手術を選択します。

PCL損傷では保存療法が第一選択になります。PCL損傷の記事はこちら

再建術について細かく説明していきます。

 

1.膝蓋腱法(bone to tendon to bone graft:BTB法)

BTB法の特徴としては、移植腱の両端に腱付着部を有しているために、移植腱の付着部の固定力が強いことにあります。

 

メリット

 

・再断裂が少ない

・移植腱自体の初期強度も高い

 

 

デメリット

 

・膝前面の痛み

・膝前面の不快感

・膝蓋骨低位

・膝伸展筋力の低下

・膝の伸展制限

メリットとして固定力が強く、再断裂も少ないことから手術療法での第一選択となっていました。

しかし、膝蓋腱の採取による問題点として、デメリットに挙げたものが指摘されています。

 

2.半腱様筋腱・薄筋腱法(Semitendinosus and gracilis tendons:STG法)

STG法の特徴としては遊離移植腱として多重折りで用いることができ、その形状を調節することが出来る点です。

 

ACLの本来の構造として前内側線維束(AMB)と後外側線維束(PLB)が存在します。

 

それをこのSTG法は再現し、解剖学的二重束ACL再建術として行えるのです。

 

BTB法では膝蓋腱を採取するために膝前面部の疼痛が出現してしまうことが問題でしたが、

 

このSTG法ではその疼痛が少ないという利点があります。

 

STG法は半腱様筋と薄筋を利用するため、膝の深屈曲に筋力低下が生じます。

患者のスポーツや仕事内容により術式を選択する必要があります。

 

ACL(前十字靭帯)損傷後のリハビリ

急性期(術後~3週)

荷重:

2週間は完全免荷

可動域訓練:

術後4週で屈曲130°、伸展0°を目標にします。

術後早期から膝は装具で固定下であっても、長座位でハムストリングスのストレッチや腹臥位でon handsで腸腰筋のストレッチを行っていきます。

膝蓋骨モビライゼーションにて膝蓋骨の可動性を保ちます。

筋力訓練:

等尺性収縮にて大腿四頭筋とハムストリングスの同時収縮を促します。

腹臥位にて膝屈曲させます。このときに下腿が回旋しないように注意しましょう

 

回復期(3週~12週)

荷重:

1/3荷重から開始し、1週ごとに荷重を増加させていく。

 

可動域訓練:

屈曲130°と伸展0°を維持

 

筋力訓練:

大腿四頭筋の収縮は膝伸展域では脛骨の前方移動を誘発させてしまいます

そのため、膝屈曲位(70°以上)で膝伸展方向へ収縮させます。

 

OKCでは、座位にて脛骨近位にゴムチューブなどで抵抗をかけて脛骨前方偏倚を抑制します。

CKCでは、1/2荷重が許可されていればスクワットをします。スクワットでは骨盤前傾位を意識してハムストリングスの収縮を促すことが重要です。

 

アスレチックリハビリ期(12週以降)

可動域訓練:

全可動域の獲得を目指す

動作トレーニング:

ジャンプ動作では着地時にknee in/toe outに注意する

 

参考図書・教科書