アキレス腱断裂の原因、治療、リハビリのプロトコルまとめ【理学療法】

アキレス腱 ストレッチ


アキレス腱断裂の病態

アキレス腱断裂は下肢の腱断裂のなかでは代表的であり、外傷性腱断裂のなかでは頻度が高い疾患です。

趣味活動や健康維持のためにスポーツ活動は幅広い年齢層で行われているため、スポーツ選手だけではなく一般の人でも容易に発生し、20代~40代、中高年層において発生しています。

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アキレス腱断裂の好発年齢と原因

・30歳~40歳代の男性に多い

・若年層ではス ポーツ活動中の受傷が多く

・高齢者では日常活動中が多い

・スポーツ種目ではバド ミントンやバ レーボール、サ ッカー、テ ニスなどの球技やラケット 使用競技で多い

・特に踏み込みや疾走、跳躍などの動作で下腿三頭筋が急激に収縮した時や、跳躍の着地時にそれらの筋肉が急に伸 ばされた時に発生する

アキレス腱断裂の危険因子

アキレス腱の退行性変化の1つ である腱の肥 厚は危険因子とされています。腱の肥厚は、腱の変性が基盤にあるため、慢性のアキレス腱炎が肥厚につながり、アキレス腱断裂にならないよう注意が必要です。

よく準備運動としてアキレス腱を伸ばしていないからと言われることもありますが、準備運動の有無や時間とアキレス腱断裂の関連についてのエビデンスのある報告はないのが現状のようです。

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アキレス腱断裂の部位

筋腱移行部では不全断裂の場合もあるが、腱部では完全断裂であることがほとんどである。

好発部位は

➀踵骨付着部の2~6㎝中枢より

 ここが90%以上を占めます。この部位は最もアキレス腱への血液供給が少ない場所とされているためと考えられています。

➁筋腱移行部

 10%以下

➂踵骨付着部

 1%以下。ここの断裂では踵骨のはく離骨折を伴うことが多いようです。

アキレス腱断裂の診断           

診断は、①問診、②診察、理学的所見、③画像 診断の3つで行われます。

➀間

 問診では「受傷時にアキレス腱部を後ろから蹴られた、ボールが当たった」と説明されるケースが多くいます。

また、断裂した際に「バンッ」と音がするの自覚できるようです。

 

➁診察、理学的所見

局所所見としてはアキレス腱断裂部に皮下の陥凹を触れるこができ、同時に圧痛もみられます。

理学的所見として

  • Thompson squeezing test

腹臥位で膝を直角に曲げた状態で下腿三頭筋を強くつまむと、正常では足関節は底 屈するが、ア キレス腱断裂ではこの底屈がみられません。

 

  • Matles test

断裂があれば爪先立ちができなくなります。

 

ほとんどのアキレス腱断裂症例では、これらの問診と理学所見にて診断は可能となります。

➂画像診断

画像診断は確定診断や保存か手術かを決める目的で用いられます。

  • 単純X線検査

アキレス腱断裂の確定診断としての診断的価値は低いですが、剥離骨折や骨棘障害などとの鑑別には重要になります。

 

  • 超音波検査

簡便であり、非侵襲的であるため有用であるとされます。

特に断裂部の腱が近接化が可能かどうか判断できるため、これによって保存療法か手術療法かを決定します。

アキレス腱断裂の治療

アキレス腱断裂の治療は保存療法と手術療法があります。

固定期間が短く、早期にリハビリをすすめていけるため手術療法が選ばれることが多いです。

保存療法

保存療法では、ギプスあるいは装具で6~8週間程固定します。装具での固定であれば、経時的に患部の観察をすることができ、患部の衛生をたもつことができます。しかし、患者さんが自分で装具を外してしまうこともありえるため、再発リスクが高まります。

アキレス腱 装具

引用元:plaza.rakuten.co.jp

メリット

・手術しないため感染リスクがない

・入院の必要がない

 

デメリット

・治療期間が長い

・再断裂のリスクが手術療法よりも高い

・固定期間が長く、可動域制限をきたしやすい

手術療法

手術療法では、ギプス固定の期間は短いこと、二次的な機能低下が少ないこと、また再発率も保存療法に比べ低いことから、こちらの治療法が選ばれることが多いです。

アキレス腱断裂の手術療法後のリハビリ

術後~1週

・完全免荷

・患部はギプス固定がなされる

・患部外トレーニングがメインとなる

・膝関節屈曲だけはアキレス腱にストレスがかかるため行わないようにする

術後1~2週

・完全免荷

・ギプス固定

・膝関節の屈曲は腹臥位で自重で行う

術後2~3週

・ヒール付き短下肢装具を装着しての1/3荷重を開始する

・タオルギャザー

・足関節の自動運動

術後3~4週

・装具のヒールの高さを減らし、1/2荷重を開始する

・片松葉歩行まで

・足関節の運動はゴムチューブで引っ張りながら背屈ROMexを行う

術後4~5週

・さらに装具のヒールの高さを減らし、2/3荷重を開始する

・装具を装着したままのスクワット

・両足でのカーフレイズ

・他動での足背屈ROMex開始

術後5~6週

・装具の除去

・全荷重開始

・傾斜台を使用しての背屈ストレッチ運動を開始

術後6~7週

・片脚でのカーフレイズ(両足カーフレイズがしっかりできてから)

・歩行では母指球でけることを意識する

術後10週

・片脚でのケンケンができることを確認してジョギングを開始する

術後12週

・ランニング

・両足でのジャンプ

術後16週

・スポーツ復帰

アキレス腱断裂の理学療法実 施にあたっ ての留意点・ 注意点

再発率に関しては、

29症例で手術療法では2.8%、保存療法では11.7%の再発率であったと報告されています。

別の20症例の報告では手術療法で2.2%、保尊療法では9.8%であったと報告されており、手術療法で再発率が低いことがわかります。保存療法の場合はより再発に注意して理学療法をすすめる必要があります。また、保存療法では固定期間が長いため、筋の萎縮、筋力低下、ROM制限、歩行異常が残りやすいため注意が必要です。