股関節を深く曲げたときに股関節の前面、鼠径部あたりに「詰まるような痛み」や違和感を感じたことはありませんか?
しゃがんだ時や車の乗り降りで脚を上げたとき、ひどくなると歩いてるときでさえ股関節の前方が痛いという人もいます。
この股関節には今、何が起きているのでしょうか?
股関節の詰まり感がでるFAIとは
股関節前方部痛の原因の一つにFAI(Femoroacetabular impingement)があります。
簡単に言うと「大腿骨と臼蓋の衝突」のことです。
股関節の骨形態異常から股関節を深く曲げたりすると大腿骨と骨盤がぶつかり、関節周辺構造(関節唇、関節軟骨等)に損傷し痛みが生じます。
その状態のまま、股関節の運動を反復して損傷組織周囲にさらにストレスがかかると、大腿直筋の起始部深部が線維化してしまいます。
股関節深屈曲でのインピンジメントでの痛み以外でも、立位や歩行でも大腿直筋起始部に痛みが生じることにもつながります。
好発年齢は20歳代~60歳代まで様々ですが、平均年齢は40歳程度です。
"FAIの症状と臨床的傾向
関節唇の損傷(断裂)により、股関節の引っかかり感、動作時の鼠径部痛や大腿部痛、階段昇降時の疼痛の増強などが症状として現れます。
股関節のロッキングやクレピタス(捻髪音)は、関節唇断裂の典型的な自覚症状ですが、FAI症候群の診断の要とはなりません。
FAIの診断と検査
画像診断
・X線
骨頭から頚部間のくびれの消失や骨棘の有無など
・MRI
関節軟骨や関節唇の変性
運動テスト
股関節の可動域検査では制限と痛みがみられます。
やり方として
患者さんに仰臥位になってもらいます。
股関節を90°にストレートに屈曲させて、そこから内転・内旋させます。
このときに痛みが誘発されると陽性と判断します。
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FAIを引き起こす骨形態タイプ
股関節の構造のパターンとして、カム型(Cam type)とピンサー型(Pincer type)、
それに両者が合わさった混合型(Combined type)が存在します。
これらの骨形態異常により股関節の屈曲時に寛骨臼側の関節唇と大腿骨頚部がインピンジメントされやすくなります。
cam型
寛骨臼に形態異常はなく、大腿骨頭から頸部の移行部の前上部に骨形態異常があるものです。
通常はこの部位が凹んでおり大腿骨頭が潤滑に動くことが出来るが、
カム型の股関節インピンジメントではこの部位が平坦ないしは凸になっており、
股関節の屈曲時などに寛骨臼側の関節軟骨・関節唇に衝突し損傷や摩耗を引き起こします。
カム型の構造の明確な原因は今のところ明らかではありません。
20〜30歳代の男性に好発します。
pincer型
大腿骨側の骨形態異常はなく、寛骨臼側に臼蓋後捻や深臼蓋などの骨形態異常があるものです。
臼蓋縁の被覆している部分が過剰であり、これにより股関節屈曲時などに大腿骨頚部と衝突し関節唇損傷をきたすものです。
カム型と同様、明確な原因は明らかではありません。30〜40歳代の女性に好発します。
混合型
Cam型とpincer型が合わさったもので、寛骨臼側にも大腿骨側にも骨形態異常があります。
股関節の詰まり感FAIの原因
FAIが起こる原因としては、股関節屈曲運動時の異常な大腿骨頭の前方偏倚が大きな原因として挙げられます。
本来は股関節屈曲運動時には大腿骨頭はやや後方に滑りながら転がりますが、
後方支持組織の硬さにより大腿骨頭が後方から前方に押されることでうまく後方へすべらず、大腿骨頭の前方偏倚を引き起こします。
梨状筋や股関節の後方関節包が後方支持組織にあたるのでこれらの硬さが原因となります。
また、腰椎前弯増強・骨盤前傾の不良姿勢もFAIの原因となります。
骨盤が前傾位となっていることで股関節は相対的に内旋位となり、股関節の屈曲運動に内旋が伴うことになります。
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FAIの治療、リハビリ
FAIに対する治療として、原因で述べた
後方支持組織・腰椎・骨盤に対してアプローチを行っていきます。
ここでは後方関節包のストレッチと梨状筋のストレッチをまとめました。
後方関節包のストレッチ
患者さんは背臥位となり、股関節90°屈曲位・軽度外転外旋でのゆるみの肢位でポジショニングします。
両手で大腿骨のできるだけ近位部を把持して大腿骨頭が寛骨臼から引き離すように牽引をかけてモビライゼーションを行います。
梨状筋の自主ストレッチ
まず両膝立ての背臥位になります。そこからストレッチしたい側の股関節外旋・外転・屈曲をして足部を反対側の膝にかけます。
反対側の大腿を両手で抱きかかえるようにして屈曲させていき、ストレッチ側股関節の外旋・屈曲をさらに強めていきます。