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半側空間無視とは、損傷した大脳半球と反対側の空間を認識できなくなる脳血管障害の後遺症です。
半側空間無視の病態について以前紹介しましたので、今回は、半側空間無視の検査、リハビリについてまとめてみました。
半側空間無視の病態はこちら
半側空間無視(USN)の評価・検査
BIT行動性無視検査日本版
半側空間無視の基本的な検査法は、抹消試験、模写試験、線分二等分試験、描画試験であり、これらはBITの通常検査に含まれます。
BITはイギリスで開発され、BIT行動性無視検査日本版は、日本人高齢者に適応可能なように作製されました。
従来の検査法の集大成である「通常検査」と日常生活場面を模した「行動検査」の2つのパートからなる点が特徴です。
ここでは、よく用いられる通常検査について簡単に説明します。
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通常検査
➀線分末梢課題
線分に印をつけていく試験になります。BITでは2本見落とすと陽性と判断されます。
②線分二等分課題
用紙の中央水平に描かれた20cmの直線の中央に印をつける試験です。中央より10 mm以上偏位する場合を陽性と判断されます。
③模写試験
手本が書かれた紙を提示し、手本と同じ絵を書いてもらう試験です。 無視側の脱落が無視の所見になります。
④描画試験
時計や人、蝶の絵を書いてもらう試験です。無視側の輪郭の欠損や粗雑さを判断基準とします。
⑤文字抹消試験
水平な5行の平仮名の文字列から「え」と「つ」のみに印をつけていく試験です。40個の平仮名のうち6個見落とすと陽性と判断されます。
⑥星印抹消試験
大小の星印と平仮名が散在する中から、小さい星印のみに印をつけていく試験になります。
標的は54個あり、3個見落とすと陽性と判断されます。
Catherine Bergego Scale(CBS)
日常生活場面での無視症状で重症度を評価します。
CBS は、半側空間無視患者の日常生活上での問題点を抽出する評価法であり、
観察による評価方法(観察評価法)と、患者自身が採点を行う評価方法(自己評価法)でその程度の評価を行います。
また、両者の合計点を差し引くことで、検査者と患者の病識の解離の程度がわかるため、病態失認の程度も客観的に評価できます。
1.整髪または髭剃りのとき左側を忘れる
2.左側の袖を通したり、上履きの左側を履くときに困難さを感じる
3.皿の左側の食べ物を食べ忘れる
4.食事の後、口の左側を拭くのを忘れる
5.左を向くのに困難さを感じる
6.左半身を忘れる(例、左腕を肘掛けにかけるのを忘れる。左足を車椅子のフットレストに置くのを忘れる。左上肢を使うのを忘れる)
7.左側からの音や左側にいる人に注意をすることが困難である
8.左側にいる人や物(ドアや家具)にぶつかる(歩行・車椅子駆動時)
9.よく行く場所やリハビリ室で左に曲がるのが困難である
10.部屋や風呂場で左側にある所有物を見つけるのが困難である
各項目0~3点で評価(0~30点)
0:無視なし
1:軽度の無視(常に右の空間から先に探索し、左の空間に移るのはゆっくりで、躊躇しながらである。時々左側を見落とす)
2:中等度の無視(はっきりとした、恒常的な左側の見落としや左側への衝突が認められる)
3:重度の無視(左側をまったく探索できない) 上記項目のうち、麻痺などでその動作が不可能な場合は、試行可能な項目の平均点を割り当てます。
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半側空間無視(USN)のリハビリ
半側空間無視に対するリハビリとして
機能的アプローチとトップダウンアプローチ、ボトムアップアプローチがあります。それぞれについて具体的な介入方法を解説していきます。
半側空間無視に対する機能的アプローチ
機能的アプローチは、日常生活活動のなかで反復して動作を練習して患者さんの自立度を向上させるものをいいます。
半側空間無視の改善を目指すというよりは、早期に半側空間無視に適応して生活してもらうことが目標になります。
具体的には
左のブレーキのかけ忘れに対して「左のブレーキ」
左の障害物にあたりそうになることに対して「左に物あるよ」などの声かけなど
半側空間無視に対するトップダウンアプローチ
代表的な訓練として視覚性の探索を促す「視覚性走査訓練」があります。
左と言っても、患者さんが認識している左にとどまってしまうため、食事トレイの左、用紙の左端などと「フレームの左 」を提示することが重要になります。
またこのときに食事トレイであれば、右手でトレイをなぞりながら左側を探索してみるなども有効とされます。
また、このときに右側の刺激が入ると左側に注意が向かなくなるので、右側からの刺激が入らない環境で訓練することが重要とされます。
トップダウンアプローチの効果は類似の課題では効果があるとされ、訓練課題と日常生活場面での課題内容との違いが大きいと効果が一定でないことが報告されています。
半側空間無視に対するボトムアップアプローチ
半側空間無視に対して、空間性注意の基盤となる運動—感覚協調に働きかけ、自動的な注意の左方移動を促すアプローチ方法をボトムアップアプローチといいます。
左後頚部への電気刺激や振動刺激により、固有感覚を通じて頭部に対して体幹が左を向いていると錯覚し、身体中心の座標系の右方偏倚が矯正されるとする方法や
ランダムドットが左向きに動く背景を用いて視運動性眼振を引き起こす方法(背景が動いている間しか効果が認められなかったと報告されている)がありますが、長期的な改善効果を認めていないのが現状です。
ボトムアップアプローチのなかで長期的な効果が期待されている方法として、プリズム順応があります。
プリズム眼鏡という外界が右方へ10°シフトして見える眼鏡をかけ、身体の正中から左10°または右10°の位置の標的に向かってすばやい到達運動を50回程繰り返します。
このときの左右の順序はランダムにし、指し示す右示指は毎回胸骨前面に戻します。
これにより視覚的には右側にずれて見える状態に到達運動が順応するのです。
プリズム眼鏡を外した後にもこの効果は2時間続いたと報告されており、毎日2回を2週間続けて行うとその後5週間効果が続いたとも報告されています。
しかし、効果が持続しないことや効果に否定的な報告がなされているのが現状です。