半球間抑制を考慮しながら治療介入した片麻痺側の大腿骨転子部骨折の患者さん

私はノートに書きながら担当の患者さんの問題点を整理したり、その日の治療介入と治療結果などをまとめて考察したりしています。

半球間抑制の記事は前に書いたのですが、実際に臨床でそのメカニズムを強く意識させられた患者さんがいたので紹介します。

性別や既往歴、年齢などの情報は個人情報のこともあるのでだしません。

半球間抑制の記事はこちら

症状と身体機能

今回は右大腿骨転子部骨折の受傷ですが、以前に脳梗塞で右片麻痺になっています。

 

簡単に身体機能を

運動麻痺:ブルンストロームステージで上肢はⅡレベル、下肢はⅣレベル

感覚障害:軽度鈍麻

関節可動域:右足関節で背屈0°

 

特徴的な姿勢や動作

座位姿勢

肩甲帯・胸椎~頚部の屈曲姿勢がつよく、腰背部は脊柱起立筋の緊張が高く、骨盤は軽度後傾位で固定されている。

他動的に骨盤の動きをだそうとしても困難であった。

両下肢ともに外転外旋位であり、足底は外側接地している。

左手は左膝に置いて支えるように押し付けている

立位姿勢

上肢の支えはなくてもなんとか見守りで可能というレベル。

体幹は屈曲と左側屈が強くかなり左優位であり、右下肢は外旋し右足は内反している。

右へ荷重を誘導すると左手ですぐにセラピストや台などにしがみつくように体幹屈曲と左側屈を強める

立ち上がり

屈曲相では体幹の屈曲と側屈を強める

左手を左大腿横のベッドに置き、離殿相において左手のプッシュにて行い、下腿の前傾などはみられず、

伸展相にかけて右足の内反の連合反応がみられる。

移乗動作

自力でおこなうと、車椅子から少しだけ臀部を持ち上げ左手のプッシュを支持にしながらスライドさせるように移乗する。

介助にて立位を経由しステップをだして行おうとするも、右支持期ではまったく左下肢をステップできない。本人も恐怖心を訴える。

ポイントとなる誘導やハンドリング

・座位にて右臀部への荷重を誘導すると体幹右側屈を強めたり、右手でベッド端を引き寄せて右荷重を誘導できない。

・座位、立位では左肩甲帯と上肢は重たく、肩甲帯から下方に押し付けがある。

・体幹も左側屈を矯正できない。

・胸椎の伸展方向への動きは徒手では誘導できず

座位において右殿筋群をハンドリングしながらだと右臀部へ荷重できる

・立位においても右殿筋群のハンドリングにて右下肢への荷重をしやすい

恐怖心がでると左上肢、体幹の代償が強まる

 

重要なポイントのまとめ

非麻痺側上下肢の過活動を抑制できると、右臀部・足部からの感覚情報の取り込みが可能となる。

仮説

今回の転子部骨折の受傷前までは杖を使用すればなんとか見守りで歩けていたとのことであるので、

受傷後から右下肢の支持性が著しく低下したことがわかります。

受傷後の初期では右股関節の痛みから、非麻痺側体幹・股関節の屈曲姿勢での運動パターンの学習により、

BOSが左側に偏移し、麻痺側のlearned non useが助長されます

またそれにより麻痺側からの感覚入力が乏しく、麻痺側のボディースキーマの欠落したことで、麻痺側に荷重しようとすると恐怖心がでてしまうと考えます。

身体図式(ボディースキーマ)の記事はこちら

非麻痺側の積極的な代償と麻痺側の感覚入力の乏しさから麻痺側へ半球間抑制が強まることで、

さらなる感覚入力の減少につながっている可能性もあります。

治療介入(1週間の治療介入です)

まず、体幹の屈曲と左側屈し左上肢で支えているため、この中では左の過活動によって右側の感覚入力をしても半球間抑制を考えると、右側の感覚が抑制されまくって意味をなしません。

そのため、脊柱、骨盤の選択運動と右下肢のアライメントを修正し、

感覚情報を取り込みやすい状態をつくり、麻痺側の感覚入力を促通していきます。

そのため、まずは過活動を抑制するためもたれ座位になってもらいリラックスしてもらうことが必要になる。

 

リッラクスできる背臥位でアライメント修正や短縮筋の長さをつくる

背臥位にて股関節の外旋を修正しようとするも困難であったため、

脊柱起立筋の短縮が股関節の抵抗につながっていることが他動運動で予測がつきました。

バスタオルを丸めてそれを腰部にあてて、そのタオルを支点にして脊柱の前弯と後彎の運動をひきだしていき、

脊柱起立筋の長さをつくっていきます。

 

これによって脊柱起立筋の伸張性がでると外旋筋の過活動が減弱し、座位では右臀部への荷重が可能となり、

両下肢ともストレートに近づきました。立位でも下肢ストレートになったことで足内反がみられなくなりました。

もたれ座位にて骨盤と脊柱の運動を引き出す

端座位では、左股関節の屈曲筋が緩まず骨盤の運動を引き出すことが困難でした。

そのため、もたれ座位を治療肢位として選択し、股関節屈曲筋の過活動をとりのぞいたなかで、

小さい範囲で骨盤の前後傾の動きを徒手的におこないながら、右臀部への感覚入力と体幹筋の賦活を狙っていきました。

また恐怖心を出さない程度に右荷重を促すために麻痺側の胸郭から体幹の抗重力伸展活動を誘導しながら右荷重を誘導を行いました。

 

背臥位でさらなる脊柱と骨盤の運動を引き出す

長期の胸郭~頭頸部の屈曲代償で胸椎や肩甲帯の短縮がみられ、脊柱の運動を引き出すことが困難であった。

そこで、背臥位で大胸筋の長さを徒手的にダイレクトに長さをだしながら肩甲骨を後傾や下制方向へ動きをだしていきました。

それにより、立ち上がりの屈曲相での体幹屈曲運動を抗重力伸展運動にきりかえ、体幹屈曲することでの麻痺側の感覚入力がぶっとばないことを狙いました。

 

以上の治療で立位での麻痺側への荷重量は増えましたが、非麻痺側をstepさせるとなると、恐怖心が出現していました。

 

麻痺側の臀部の感覚入力と麻痺側体幹部の伸展活動

頭頸部の屈曲固定が肩甲帯や胸郭の伸展活動を阻害しているため、

頭部に枕などで安定を与えたまま、肩甲帯の運動から頭頸部の筋の伸張を行い、胸椎部の伸展活動につなげました。

また、立位では麻痺側下肢の感覚がとぎれないように、麻痺側殿筋をmoldingしながら立位をとるようにしました。

 

それによって、自力での立ち上がりは、非麻痺側の上肢でのpushはベッドから膝の上になり(膝の上のpushになったということは左側屈が減ることを意味します。)、

麻痺側下肢への荷重は乏しいながらも荷重量の増加につながりました。

 

治療のまとめ

左上下肢の過活動を抑制しながら脊柱の可動性を引き出すことで、右臀部、足底の感覚入力ができました。

しかし脊柱と骨盤の動きは依然乏しかったため、背臥位にて促すことで、座位での骨盤、脊柱の選択運動の改善がみられ、

立ち上がり時の屈曲および体重移動相での骨盤の前傾運動と両足部への重心移動が可能となりました。

伸展相では右臀筋をmoldingすることで、右下肢の感覚情報が取り込めるようになり、

左優位の動作パターンを軽減することができ半球間抑制の影響が受けにくく、立位につながりました。

長期間の運動パターンであるため、麻痺側の感覚入力を継続して行いボディスキーマの形成を促していく必要性があると考えます。

参考図書・教科書

 




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