ファンクショナルリーチテスト(FRT)とは?
ファンクショナルリーチテスト(Functional Reach Test)は機能的リーチテストとも呼ばれ、転倒リスクを簡便に調べるためのバランス能力を評価するツールです。
直立で上肢を90°挙上させた状態で、倒れない範囲で体を前方にギリギリまで倒していき手を前方にリーチさせていきます。
そして元の直立姿勢までもどってきます。これは支持基底面のなかに重心を収めながら、ギリギリまで重心を移動させながらも姿勢制御する能力がもとめられ、動的バランス能力を評価するものとされています。
動的バランス・静的バランスの記事はこちら
このファンクショナルリーチテストは日本理学療法士協会の診療ガイドラインでは推奨グレードAとされており、信頼性と妥当性が高いと認められ、簡便に行えることもあり臨床で広く使用されています。
"ファンクショナルリーチテスト(FRT)の実施方法
準備するもの
メジャー、リーチの開始位置と最大到達位置をプロットするための付箋紙、立ち位置を示すためのテープ
評価の手順
➀ 検者は足幅を肩幅か握り拳一個分開いて(どちらかに統一)、壁を横にして立ちます。
➁ 「背筋を伸ばして前ならえしてください」と声かけし、非検査側の上肢をさげてもらい、検査側上肢90°挙上位、体幹の回旋や屈曲がはいらない直立姿勢の開始肢位をとってもらいます。
➂ 検査側上肢の手指は軽く握り、第3指中手骨の末端の位置を0㎝としてプロットします(付箋紙を壁に貼ったり、ホワイトボートがあれば、線を引く)。
➃ 「足を踏み出すことなく、手を前方にリーチしてください」と指示し、リーチしてもらいます。
➄ 最大にリーチしたところで、 第3指中手骨の末端の位置をプロットします。
このとき踵が浮くのはOKで、足を踏み出したらやり直しです。
➅ 元の直立姿勢にもどります。戻れなかったり、戻る際に足を踏み出したり、壁にもたれたりしたらやり直しです。
➆ 開始位置(0㎝)から最大到達点までの距離を測ります。
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実施上の注意点
・再検査時に比較、検討できるように測定状況を統一する
例えば、足幅は肩幅程度開くのか、拳一個分開くのかや、上肢は右と左のどっちか、検査した場所の環境(人通りが少ない場所が好ましい)
・検査中に転倒する可能性があるので、椅子を置く、すぐ支えられる位置にセラピストがいる、もう一人スタッフに手伝ってもらうなどの配慮をする
・上肢の高さが変化したり、足が踏み出しってしまったりしたら最初からやり直す。
正確に計測するポイント
開始姿勢で体幹の回旋や屈曲がみられると、検査結果が正確でなくなってしまいます。
高齢者では少し体を屈曲している姿勢が楽なことが多く、また検査側上肢だけ挙上させると、体幹回旋がはいってしまうことが多いです。
そのため、開始姿勢をつくる声かけとして「背筋を伸ばして前ならえしてください」と声かけします。
両上肢を挙上すると体幹の回旋が入りづらいので、まず両上肢を挙上してもらってから、片方を降ろしてもらいましょう。
ファンクショナルリーチテスト(FRT)の年代別の基準値
年代 |
到達移動距離(㎝) |
22~29 |
42.71±0.78 |
30~39 |
41.01±0.73 |
40~49 |
40.37±0.53 |
50~59 |
38.08±0.53 |
60~69 |
36.85±0.53 |
70~79 |
34.13±0.54 |
高齢者の機能障害に対する運動療法、市橋則明、文光堂、2010
"
ファンクショナルリーチテスト(FRT)のカットオフ値
ファンクショナルリーチテストの結果は、転倒の予測に使用されます。
- 虚弱高齢者の場合(Thomas et al., Arch Phys Med Rehabil. 2005)
18.5cm未満で転倒リスクが高い
- 脳卒中片麻痺患者の場合(Acar & Karats, Gait Posture 2010)
15cm未満で転倒リスクが高い
- パーキンソン病患者の場合(Dibble & Lange, J Neurol Phys There 2006)
31.75cm未満で転倒リスクが高い
まとめ
ファンクショナルリーチテストは簡便に行うことができ、信頼性も高いものとして広く利用されています。この値だけでなく、10m歩行テストやBBSなどのバランス評価の結果から数値として見える形で、医師や看護師に患者さんが在宅復帰可能か、屋外歩行は可能なのかなどを説明し、チームで目標の共有ができると思います。