脊椎圧迫骨折は高齢者の骨折のなかでも頻度が高いものです。
再発のリスクも高いため、リハビリでの生活指導や運動療法が重要になります。
今回は、脊椎圧迫骨折の病態、原因、治療、リハビリなどについてまとめてみました。
脊椎圧迫骨折のリハビリのために病態を知ろう
圧迫骨折は外部から加えられた圧迫する力によって、脊椎の椎体という骨が潰れてしまう骨折のことです。
骨折というとボキッと折れるイメージがあると思いますが、圧迫骨折はグシャッと押しつぶされて起こります。
胸椎で骨折すれば「胸椎圧迫骨折」、腰椎で骨折すれば「腰椎圧迫骨折」と診断されます。
どちらの骨折でも治療方法、リハビリ内容は大きくは変わりません。
X線、CT、MRIなどの検査で容易に診断できます。痛みに対しては、ボルタレン、ロキソニンなどの非ステロイド消炎鎮痛薬を使います。
治療法は、安静治療か手術治療かを選択。
どちらが優位か現時点では結論はでていません。
神経症状がなければ安静治療で時間をかけて治癒させることも可能です。
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脊椎圧迫骨折の原因
受傷機転として
・転倒
・勢いよく座ってしまう
・重い物を持ち上げる
・くしゃみや咳
など、圧迫骨折は外力が縦方向に働いた時に生じることで骨折します。
しかし、私たち世代(20代)もっといえば50歳いかないくらいの年代の人で転倒や重い物を持ち上げても圧迫骨折になってる人はほとんど見かけたことはないと思います。
それでは、ちょっとした衝撃程度でも腰椎圧迫骨折になってしまう人と、そうはならない人がいるのは何故なのか?
それは、加齢による
・骨密度の低下
・猫背などの不良姿勢
・脊柱を支持するための体幹筋力低下
などの要因が大きく影響してくるからです。
脊椎圧迫骨折の症状
脊椎圧迫骨折の主な症状としては腰背部痛です。
特に急性期は歩くことはおろか、寝返りを打つことさえ困難なほどの激しい痛みがあるのが一般的です。
いままで担当した患者さんも安静臥位では痛みは少なく、体動時に激しい痛みがある場合がほとんどでした。
また、骨折した椎体の骨片が脊柱管内に突き出し、脊髄を圧迫することで、体動時以外でも下肢の痛みや痺れ、知覚麻痺、膀胱直腸障害などが発生することもあります。
"脊椎圧迫骨折の診断
これは画像所見で診断されます。
・レントゲン
・CT
・MRI
がありますが、レントゲンではっきりわかることが多いようです。
ただし、神経症状が出ている場合はCTやMRIにて骨片が脊髄を圧迫しているかを精査する必要もあります。
脊椎圧迫骨折の治療
圧迫骨折の治療として保存療法、手術療法の2つの治療法があります。
保存療法
圧迫骨折の治療法の第一選択として保存療法が洗濯されます。
骨折した椎体に力学的な負荷を与えないことが目的になります。
コルセットを装着して安静にし、骨癒合を待つというものです。
手術療法
2椎間以内の比較的軽度の圧迫骨折に対する手術法でまず挙げられるのが、経皮的椎体形成術(PVP)です。
圧迫骨折によりつぶれた椎骨をセメントで整復していきます。このことからも経皮的椎体形成術は骨セメント療法とも呼ばれています。
低侵襲で、痛みに対して即効性のある治療法であり、1980年代後半ぐらいから欧米中心に行われてきた手術方法です。
3椎間以上の圧迫骨折(多発性圧迫骨折)をした場合には、椎体形成術に固定術を併用することがあります。
また、圧迫骨折の後で脊椎が変形してしまった時に用いられる手術法には、
片側進入腰椎後方椎体間固定術(TLIF)と後方進入腰椎椎体間固定術(PLIF)が用いられます。
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脊椎圧迫骨折のリハビリ
受傷直後
受傷後1~2週間ほどは体動時の疼痛が強いため、ベッドサイドでの介入になることが多いです。
・ベッドサイドでの関節可動域訓練、筋力訓練
・呼吸理学療法
疼痛が強く体幹や胸郭の大きい動きは困難なため、胸郭の運動性が低下してしまいます。
胸郭の運動性と肺機能維持のため呼吸訓練も重要になります。
・座位訓練
起居動作が困難なことが多いため、ベッド上でギャッジアップ座位訓練を行います。
このとき、体幹が屈曲してしまわないようにベッドに対して患者さんの体を頭方向に引き上げてからギャッジアップを行います。
受傷後3~4週後(疼痛軽減後)
・物理療法
温熱療法などで腰背部の疼痛軽減、筋スパズムの軽減を図ります。
あらかじめホットパックを用意して車椅子の背もたれに置いておき、リハビリ室までの移動中腰背部に当てておいても良いのではないでしょうか。
物理療法、温熱療法についての記事はこちら👇
・運動療法
運動療法としては、背筋群の過緊張の軽減・脊柱の運動性改善・脊柱の安定性向上、
椎体前面の圧迫を軽減するための体幹の伸展運動が主になると思います。
具体的な体幹伸展運動・伸展筋収縮トレーニング
・背臥位
両足部にクッションを置き、膝伸展位のまま両足でクッションを下方に押すようにして股関節伸展と体幹の伸展を促します。
・四つ這い
四つ這いのまま、一側上肢または下肢を挙上します。
・座位
座位にてセラピストが背中から抵抗をかけ患者さんに体幹伸展したまま押し返してもらいます。
このときに、下肢で床面を蹴っていたり、頭頸部の伸展や体幹屈曲で押し返さないように注意しましょう。
両上肢挙上してバンザイをしたまま押し返してもらうと代償が少なく、動作ができることもあります。
生活指導
圧迫骨折の方は起居動作時に痛みの増強を訴えることが多いと思います。
体幹や骨盤を回旋してからベッドから先に下肢をおろしてから起き上がる動作では椎体に回旋のストレスがかかります。
また先に下肢を降ろすと骨盤傾斜が起こり、これも椎体にストレスがかかります。
中にはnon rotationパターンで体幹屈曲で起き上がる方もいるでしょう。
椎体前面の圧迫骨折が多いため、この起き上がり方では椎体前面にさらなるストレスがかかります。
ベッドからの起き上がりは、体幹回旋が起きないように骨盤の傾斜が起きないようにします。
やり方としては、
背臥位にて両膝を立てて、その両膝を寝返る方向に倒すと同時に肩甲帯も寝返る方向に回転して側臥位になります。
両下肢をベッドからおろすのと同時に両上肢でベッド面を押して起き上がります。