低栄養状態におけるリハビリの負荷量の目安



スポンサーリンク

近年「リハ栄養」という言葉を耳にすることが増えてきました。リハビリを行う上で「栄養」は欠かせないもで、低栄養の状態で無理にリハビリをしても効果がない、むしろ逆効果になるのです。だからといってリハビリを全く行わないと廃用が進行してしまいます。

低栄養の原因や低栄養状態の程度、その程度に合ったリハビリの負荷量などをまとめてみました。

リハビリを行なっている人に低栄養が多い

日常生活において、低栄養状態に遭遇することはあまりないとは思います。しかし、65 歳以上の高齢者の血中アルブミン値を調査した研究では、回復期リハ病棟の入院患者で血中アルブミン値が低いことが明らかになっています。(在宅4.2 g/dL,高齢者施設3.7 g/dL,医療療養病棟3.3 g/dL,回復期リハ病棟3.1 g/dL,など)

比較的若年の運動器疾患のリハビリ患者では、栄養状態は問題ないことが多いですが、高齢化や医師やコメディカルの栄養に関する知識不足から、実際にリハを行っている患者の多くは低栄養状態にあります。低栄養の原因としては、飢餓、侵襲(急性疾患、外傷)、悪液質(慢性疾患)に大きく分類できます。いずれの原因もリハビリを行う高齢者に当てはまることが多いでしょう。

低栄養の原因

低栄養になる原因として侵襲、悪液質、飢餓の3つがあります。

大きな目安としてはCRP 0.3〜0.5 mg/dL 以上が3 カ月以上続けば悪液質、短期のCRP 高値を認めれば侵襲、CRP 陰性であれば飢餓とすることもあるようです。

 

① 急性疾患,損傷(侵襲)に関連した低栄養

例えば、侵襲とは手術や骨折直後の状況を指し、この状態では筋肉が1日1kg減少すると言われています。また炎症状態を認める時には、筋蛋白の異化亢進(分解されること)が認められます。

 

② 慢性疾患(悪液質)に関連した低栄養

がんやCOPD、心不全、腎不全、肝不全、膠原病などによって低栄養が生じます。これらの疾患により炎症、インシュリン抵抗性、筋蛋白崩壊につながるとされます。また、

① 6 カ月以内に5%以上の体重減少、

②慢性・再発性の全身性炎症反応、

③食思不振、もしくは食思不振に関連した症状があれば、悪液質と判断されます。

 

③ 飢餓に関連した低栄養

吸収不良、消化管疾患、および食欲不振などにより(薬剤の副作用に起因することもある)、エネルギー摂取不足が原因で飢餓・低栄養の状態になります。

 

身体機能の低下・環境に起因する低栄養

加齢に伴って四肢の筋力の低下だけではなく、咀嚼・嚥下の筋力の低下も起こります。また、消化器の問題であったり、一人暮らしで食事が面倒になる、食事が楽しくないなども食事量の減少につながり、しまいに低栄養につながるのです。

 

身体機能の低下

1.食欲の低下(筋肉減退による基礎代謝の減少など)

2.咀嚼力、嚥下力の低下→歯の欠損が咀嚼力低下につながる

3.唾液分泌の減少

4.消化液分泌量の減少

5.消化器官の障害(便秘、下痢)

6.味覚・嗅覚の低下→これが食欲の低下につながる

7.嗜好の変化(胸やけしやすくあっさりしたものを好む)など

 

 

環境・心理的要因

1.一人暮らし(食事をつくるのが面倒/一人で食べても美味しくない)

2.老夫婦だけの暮し(刺激不足)

3.自立度の低下(介助が必要)

 4.買い物などが困難(夏期や冬期/遠い)

 

 

栄養スクリーニング

栄養スクリーニングは栄養の問題があるかどうかをBMI、体重減少率、食事摂取量、血清アルブミン値、栄養補給方法、褥瘡などによって判断するものです。

リスク分類

低リスク

中リスク

高リスク

BMI

18.5~29.9 kg/m2

18.5 kg/m2未満    

体重減少率

変化なし (減少3%未満)

1ヶ月に3~5%未満 3ヶ月に3~7.5%未満 6ヶ月に3~10%未満

1ヶ月に5%以上 3ヶ月に7.5%以上 6ヶ月に10%以上

血清アルビミン値

3.6g/dl以上

3.0~3.5g/dl

 3.0g/dl未満

食事摂取量

良好(76%~100%)

不良(75%以下)

栄養補給法  

経腸栄養法 静脈栄養法

褥瘡

褥瘡

 

・体 重

体重はもっとも簡便に栄養状態を知れる指標になります。食事摂取量は適切か、現在の体重が標準かを推測できます。また、急激な体重の増減などは自律神経の障害や炎症などを示していることがあります。

・BMI

BMIとは、肥満度の判定方法の1つです。 BMI指数の標準値は22です。統計的に一番病気にかかりにくい体型で、標準からは離れるほど有病率は高くなります。

 ・BMI=体重(kg)/身長(m)2      ・標準体重(kg)=身長(m)2 ×22

WHOの分類では BMI18.5未満で低体重、25以上30 未満で 肥満予備軍、30以上で肥満としています。

 

・体重減少率

体重の変化は何らかの栄養状態の変化を表し、85~90%で軽度、75~86%で中度、75% 以下では高度の栄養障害が考えられます。 体重減少は活動量、食事摂取量、炎症、自律神経の障害などでもみられるので、それらも考慮します。

 

・血清アルブミン

アルブミンは、総蛋白の50~70%を占めており、肝臓で合成されます。半減期が 17~23 日と比較的長いため、慢性疾患や安定した時期での栄養評価に適して います。正常範囲は 3.5~5.0g/dl です。脱水症の場合、血液が濃縮されるためにアルブミンがみかけ上高値となります。また、肝障害では合成能が低下し、低値を示しますが、血中のタンパクは多い状態のため注意が必要です。

 

・食事摂取量

年を重ねると咀嚼力・嚥下力の低下、消化器系の機能低下、運動能力の低下から食材を買わない・調理をしない等の要因から食事摂取量が少なくなっていきます。

・栄養補給法

栄養補給法としては、経腸・静脈栄養があります。この栄養補給ではが十分に栄養が確保されないことが危惧される場合もあり、感染症などのリスクが高く、もし感染症となったらタンパクの分解が進むなど低栄養状態のリスクが高くなります。  

・褥 瘡

褥瘡は、体と支持面との接触部位で組織の血流不全となって、周辺組織が壊死して起こります。直接の原因が栄養というわけではありません。

しかし、低栄養状態だと筋肉量が減り、骨が突出し、皮膚組織の耐久性の低下することから、褥瘡のリスクが高くなることが容易に想像できます。

また、褥瘡の研究報告によると褥瘡発生者は非発生者と比較すると低栄養状態の人が多いとされています。

 

リハビリの負荷の目安

高度栄養障害 Alb2.0未満

【目的】

運動療法はコンディショニング(拘縮予防、褥創防止、認知症予 防など)を中心に行い、二次的障 害を予防する。

【ポイント】

Albが2.0以上になるまでは我慢、リハビリによ る効果が表れても、数値 が上がるまで要注意

【運動強度】

負荷なし~軽い負荷。運動終了時「楽になった」「軽 くなった」と言われる程度 の運動強度にする

 

中等度栄養障害 Alb2.0 ~2.7

【目的】

少しずつ離床を進める

【ポイント】

運動負荷量の判断は翌日の状態(疲れ)をみ て判断する。リハビリ 中の休憩を多くする。

【運動強度】

他動的運動⇒自動運動⇒レジスタンス運動。軽 い負荷から少しずつ運動 強度を増やしていく。

 

軽度栄養障害 Alb2.8~3.5

【目的】

疲れない範囲で、体力増進、日常生活活動の自立 を進める

【ポイント】

疲れない範囲であれば栄養障害のことはあま り考えないで普通にリ ハビリする

【運動強度】

レジスタンス運動を中心に行い、運動強度は 軽い負荷から少しずつ 増やしていく