安全に食べるとはどういうことなのか、以下にまとめてみました。
大きく分けて一つ目に、嚥下障害を理解する事、正常な嚥下のメカニズム、誤嚥性肺炎のメカニズムを知ることです。
二つ目に、誤嚥をしない為に必要な摂取時の姿勢について解説します。
摂食・嚥下のメカニズム
ます健常者の摂食メカニズムです。
1.認知期
認知期では視覚や嗅覚で食べ物であると食物を認知、どの様にして摂取するかを考えます。
2.準備期
食物を口腔内に取り入れる為に、食物に適した開口を行い捕食し、口腔内に保持、咀嚼をして食塊形成をします。
3.口腔期
咀嚼した食物を舌を使い、咽頭まで移送します。
4.咽頭期
食物を咽頭から食道へ送り込みます
5.食道期
食物が食道を通過し胃へ移送されます。
以上が摂取時の健常者のメカニズムとなっています。
誤嚥性肺炎は日本人の死亡原因の3位
誤嚥性肺炎は日本人の死亡原因の第3位とされております。
様々な肺炎の種類がある中で、誤嚥性肺炎は80歳代の約8割、90歳代以上では9.5割以上の割合で起こっております。
後期高齢者の肺炎のほとんどは誤嚥性肺炎と言えます。
なぜ誤嚥性肺炎が起きる??
では誤嚥性肺炎がどの様にして起こるかについてです。
様々な原因や疾患で、嚥下反射遅延・減弱、咳反射減弱・消失、気道防御機能低下により、
食物や唾液を気管に流入、誤嚥をしてしまうことが原因で引き起こされます。
誤嚥した際に食物や唾液と一緒に、細菌も誤嚥してしまい、肺に侵入後に誤嚥に引き続いて発症する肺炎が誤嚥性肺炎とされています。
誤嚥性肺炎の原因
誤嚥性肺炎の原因
廃用症候群⇒長期臥床などにより嚥下に関わる筋肉量の減少
脳血管障害⇒嚥下反射遅延
嚥下力低下
神経難病⇒嚥下反射遅延、嚥下力低下
不顕性誤嚥を起こしやすい。
その他にも
口腔内汚染により細菌繁殖、咀嚼・食塊形成が適切に行われないことや鎮静剤、睡眠薬、向精神薬、
抗コリン剤等による覚醒低下・意識低下気管切開、経管栄養、不適切な食物形態の提供、摂食環境・誤った介助法、
また睡眠時は嚥下回数が減少する為、寝ている間の唾液誤嚥によるものも多いとされております。
誤嚥性肺炎の症状
定型的症状として、発熱、咳、痰、呼吸困難、喘鳴、チアノーゼ
非定型的症状では、食欲低下、意識障害、脱水、不穏、せん妄
等の症状が認められます。
食事の正しい姿勢とその理由
次に食事の際の正しい姿勢についてご説明します。
座位姿勢のまま食事を行う方は、腰背部、臀部が椅子の背もたれや座面に接触し安定している事が望ましいです。
身体が不安定なままだと、身体が安定を求め、不必要な力が加わり、嚥下のし難さに繋がるためです。
また、姿勢の崩れを防ぐために足底が、フットレストまたは床にしっかりと着くようにします。
必要であればクッションやタオル、踏み台などの道具を使用し調整を行います。
さらに、頸部は前屈している状態、つまり頚部前屈位が、安全かつ嚥下状態には望ましい姿勢です。
頸部前屈が安全な理由は後程説明させて頂きます。
また、食事介助が必要な方に対しては、介助者は目線を同じ高さを保ちます。
目線が高くなると、患者さんの頸部は伸展し誤嚥のリスクが高まるためです。
そのため介助者は椅子等に座り目線を同じ高さに保ちます。
ベッド上の場合の正しい姿勢
離床が出来ない方はベッド上で食事摂取を行う場合もあります。
その際も頭部、腰背部、臀部、下肢、足底はクッションやタオル、枕等を使用し安定が得られる姿勢を作ります。
座位での摂食時と同じく、不安定な姿勢での代償による嚥下のし難さを誘発させないためです。
耐久性に乏しい方は、摂食時に体が左右に傾く事が多いため、その都度修正を行います。
机の高さの調整も重要で肩甲帯から上肢にかけてリラックス出来る位置への机の高さを設定します。
頚部を前屈する理由
頸部前屈は、咽頭と気管に角度がつくため誤嚥を引き起こしにくくし、安全とされています。
頚部を前屈することにより咽頭と気管に角度がつき誤嚥しにくくなります。
同じようにリクライニングは、身体全体の角度をつけることで食魂が咽頭の後ろの壁に沿って通過する為、誤嚥を引き起こしにくくします。
最も嚥下しやすい姿勢は、
体幹が30度起きた状態で、頸部前屈・前突位 です。
試しに頚部を伸展したまま飲み込んでみて下さい。
すんごい大変で、つばを飲み込みずらく、のど周りが疲れる感じがすると思います。
飲み込みやすい食べ物・飲み込みずらい食べ物
「嚥下しにくい」食べ物
・固体と液体が混ざったもの
⇒果物、さらさらの雑炊、具入りスープ
・噛み切りにくいもの
⇒餅、こんにゃく、さつま揚げ、すじ肉、イカ、タコ
・繊維が多いもの
⇒キャベツ、ゴボウ、フキ、パイナップル
・バラバラになりやすいもの
⇒クッキー、せんべい、粉薬、そぼろ、焼き魚
・張り付くもの
⇒板海苔、薄切りきゅうり
・熱すぎる・辛すぎるもの
⇒ラーメンのスープ
「嚥下しやすい」食べ物
・とろみのある液体
⇒ポタージュスープ、ネクター状飲料 など
・均一でまとまりのある物
⇒ヨーグルト、温泉卵 など
・粘着性が低く、「つるり」とした物
⇒ムース、ゼリー、卵豆腐、絹ごし豆腐 など
まとめ
座位、ベッド上での食事時の姿勢について説明させて頂きましたが、以下にまとめてみました。
①頭部、腰背部、臀部、下肢、足底が座面や床に接触すること。
身体が安定する事でリラックスできます。
ベッド上でも足底の接触は重要です。
②頭頚部は頸部前屈していること。
③ 介助者のポジショニングは目線を合わせること。
高い位置から介助すると頚部が伸展し誤嚥しやすくなる為、配慮が必要です。