長下肢装具を用いるために姿勢制御を理解しよう!神経学的側面からみたメリット、回復機序




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長下肢装具での治療には姿勢制御系の理解が必要

姿勢調整に大きく関わる神経路として、網様体脊髄路系が挙げられます。

網様体脊髄路系は体幹・四肢近位筋の運動制御に関わり、運動の中で重力に抗して姿勢を安定させる際に強く働く経路です。

その網様体脊髄路は橋網様体脊髄路と延髄網様体脊髄路に分けられ、諸説ありますが、

 

橋網様体脊髄路主に体幹・四肢近位の伸筋群やコアマッスルの筋緊張の制御

延髄網様体脊髄路屈筋群の筋緊張の制御に関わります。

これらの経路は両側性支配でその多くは同側性に働きます。

そのため例えば右半球損傷の場合は、左側の運動麻痺だけではなく、右側の体幹・四肢近位の運動麻痺も起こる事になります。

なので患側と健側の分け方はナンセンスで麻痺側とほんのちょっと麻痺側に分けるのがいいでしょうか。

 

これらの働きにより、体幹・四肢近位の安定を高め、姿勢が制御されていきます。

また網様体脊髄路の働きは、小脳室頂核からの投射による、小脳からのフィードバックによる働きだけではなく、

大脳皮質と連絡し、四肢の運動をする時準備的な姿勢の安定・姿勢のセットを行い、四肢の運動をスムーズに行う働きもあります。

この準備的に姿勢を安定させる働きが予測的姿勢制御(APA)と呼ばれます。

予測的姿勢制御

予測的姿勢制御は先行随伴性姿勢調節などとも呼ばれ、随意運動を開始する前に、

その運動に先行して姿勢筋を活動させる事で姿勢を安定させ、

主動作筋の活動に備えるフィードフォワード制御で、

6野で生成された運動プログラムが4野に送られる際に、同時に皮質網様体路を通って網様体に姿勢制御のプログラムが送られ、網様体脊髄路の働きで姿勢を制御します。

この事から、随意運動を円滑に行うためには、その運動の直前に体幹や四肢近位が安定する事が重要な要素となります。

 

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脳卒中の方は姿勢制御が上手にできない

皮質脊髄路の障害によって随意運動が出来ないだけではなく、

運動を行う前段階の姿勢の安定がそもそも作れていない事が問題で、運動麻痺を助長させていると考えることができます

そしてその状態でもなんとか運動しようとして、非麻痺側を代償的に使って姿勢を安定させようとしてしまうパターンを取ってしまう事に繋がってしまいます。

片麻痺のよくみられる姿勢を例に

右の皮質脊髄路の障害により左上下肢に麻痺がみられる症例で考えます。

アライメントを見ると左側に上手く荷重がのせられず左体幹もアップライトにできずに右へアライメントが崩れる、側屈し屈曲します。

しかし、さきほど話した網様体脊髄路は両側性(多くは同側性)に下行しているため、この時右側の皮質網様体路も障害されています。

それもあり右側体幹の伸展活動も十分に行えておらず、右側下肢でもストレートに上手く荷重できず屈曲優位の姿勢となっています。

この状態でどんどん歩行練習を進めても、網様体脊髄路系の賦活にはならず、逆に代償的なパターンをどんどん学習してしまうため、あまり効率的ではないと思われます。

早期から長下肢装具を正しく使用すると

麻痺している右下肢に早期から長下肢装具を装着し、積極的に麻痺側へ荷重を行い深部感覚の入力を促通します。

すると脊髄小脳路から上行してきた深部感覚を元に、ある程度残存していた右側の網様体脊髄路が賦活され、右側体幹の安定と下肢の支持性が徐々に得られてきます。

そして、この後に重要になるのが左側(非麻痺側)下肢にもしっかりとストレートに荷重をする練習をするという事です。

それは障害側(この場合では左側)の網様体脊髄路は多くが同側性支配の為、非麻痺側の体幹の安定が得られにくい状態となっているため非麻痺側への荷重も必要なのです。

覚醒の改善にも長下肢装具を応用

脊髄視床路、脊髄小脳路は、感覚刺激によって網様体を賦活し、視床を介して大脳皮質を覚醒させる。

⇒長下肢装具を使用し、アライメントを整えた立位を早期からとらせることで、足底の荷重などの深部感覚が脊髄小脳路を上行し大脳皮質を賦活させるのです。

プッシャー徴候にも長下肢装具を応用

視覚情報と体性感覚情報とのマッチングが上手くいかない→プッシング徴候がみられ、姿勢の垂直位を保てない

 

長下肢装具を使用し、麻痺側の正中位を保障し、適切な深部感覚を入力することで、連合野の混乱を軽減することができる。

まとめ

このように運動を行う上で様々な姿勢制御の働きがあります。

私たちが多くみる脳卒中ではどうしても運動麻痺による動作障害に目が行ってしまいがちですが、

その動作障害の背景にはどのような制御があるのかを知り、今起きている現象がどこの問題によって起きているかをしっかりと見極め、アプローチしていく事が重要なのだと感じました。