抗重力位をとると覚醒の賦活につながるのはなぜ



覚醒が低いから「座位や立位で抗重力姿勢をとって覚醒の賦活を図る」とよく考えられます。

 

実際私自身もなぜ抗重力姿勢と覚醒を関連づけられるのかはっきりしていないままリハビリを行っていることが多かったです。

 

そこで今回は姿勢と覚醒についてまとめてみました。

なぜ抗重力姿勢で覚醒が賦活するか?脳幹網様体との関係

覚醒の神経機構として上行性網様体賦活系が知られています。

覚醒状態の維持のためには、脳幹網様体の興奮が必要です。

 

この脳幹網様体の興奮が上行性に伝えられて視床で中継され、大脳全体を興奮させることによって、覚醒状態を維持できるとされています。

 

では、なぜ抗重力位をとると覚醒の向上につながるのでしょう。

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覚醒と神経伝達物質

脳幹網様体賦活系の作用は、神経伝達物質によって修飾されています。

そして抗重力姿勢をとることでこの神経伝達物質の放出が促されるとされています。

 

筋緊張の促進系と抑制系

筋緊張は促進系と抑制系が相互に抑制をしながらコントロールしています。

・促進系

モノアミン作動性下行路、促通性網様体脊髄路、前庭脊髄路などがあります。

モノアミン作動性としては、青斑核に発するノルアドレナリン作動性投射と背側縫線核に発するセロトニン作動性投射があります。

前庭脊髄路についての記事はこちら

※モノアミン

アミノ基を一個だけ含む神経伝達物質または神経修飾物質の総称である。セロトニン、ノルアドレナリン、アドレナリン、ヒスタミン、ドーパミンなどが含まれる。

・抑制系

脚橋被蓋核(PPN)からのコリン作動性投射により賦活される抑制性網様体脊髄路があります。

網様体脊髄路の記事はこちら

覚醒と筋緊張と広範性投射系

前項で述べた筋緊張促進系のノルアドレナリン作動性投射とセロトニン作動性投射は広範性投射系と呼ばれる特殊な形態をしています。

 

普通のニューロンは特定の標的に投射しますが、この広範性投射系は脳幹から軸索を発して枝分かれをしながら脳全体に網のように覆う特殊な形態をしています。

 

また、抑制系であるコリン作動性投射系も広範性投射系を形成しています。

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抗重力姿勢をとることと覚醒との関連

覚醒の維持には、脳幹網様体の興奮が視床を介して大脳全体を興奮させることで成り立ちます。

 

抗重力姿勢をとることで、筋緊張の促進系であるモノアミン作動系が刺激され(このときに抑制系も相互に働く?)、大脳全体に広範に投射していることで大脳の興奮につながるのです。

 

日光を浴びることも覚醒につながりますが、そのメカニズムを解説します。記事はこちら