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膝関節屈曲制限はTKAや膝の靭帯の再建術後などの膝関節を直接手術した場合や、大腿骨骨折での術後にとても多いと思います。
手術で侵襲された組織の伸張性が低下していることが大きな原因かもしれません。
また術後に痛くて屈曲することができず、伸展位で固定されたことでの伸張性低下、組織の癒着が原因かもしれません。
さまざまな原因がある中、今回は一度癒着してしまうとはがすのが困難とされている「膝蓋上嚢」について解説してきます。
なぜ膝蓋上嚢の癒着が膝関節屈曲制限につながるか?
膝蓋上嚢は大腿骨と膝蓋骨とをつなぐ滑液包です。膝関節における膝蓋骨の長軸移動を円滑化する役割があります。
膝関節伸展位では二重膜構造、膝関節屈曲に伴い単膜構造へと変化する滑液包であり、
同部位の癒着は重度膝関節拘縮を引き起こす要因の一つであるとされている。
膝蓋上嚢の役割
膝蓋上包は膝関節の屈伸時における膝蓋骨の移動を円滑化する役割があります。
膝関節伸展位では膝蓋上包は近位で折れ曲がり二重膜構造を呈しており、
屈曲するに従い膝蓋骨が下方へ滑っていき、その膝蓋骨に引っ張られるように膝蓋上嚢は徐々に単膜構造に変化していきます。
逆に伸展では膝関節伸展筋により膝蓋骨が牽引され、再び二重膜構造へ戻ります。
膝蓋上嚢の癒着による膝屈曲障害
膝蓋骨、半月板、十字靭帯などの損傷で、膝関節の伸展位での長期固定がなされると膝蓋上包に癒着を生じます。
この癒着により二重膜構造特有の滑走が阻害されると屈曲に伴う膝蓋骨の長軸移動が制限され屈曲制限が生じます。
膝蓋骨が可動できなければ、膝関節は70°以上の屈曲が行えないといわれています。
膝蓋上嚢の癒着とextension lagとの関係
Extension lagの要因は、大腿四頭筋の筋力低下、疼痛などによる筋出力低下などと一般的にいわれているが、その他に、膝蓋上包の癒着により四頭筋の収縮で膝蓋骨を十分に近位に引き寄せられないことも要因の一つになる。
膝蓋上嚢とprefemoral fat pad
膝蓋上嚢の深部にはprefemoral fat padが存在し、中間広筋、内外側広筋の深部の繊維と連絡しています。
機能はいまだに解明されていませんが、prefemoral fat padは膝屈曲時には前後幅の厚みが減少し内外側方向に広がります。
膝伸展時には広筋群の厚みが増大するのと同様にprefemoral fat padの厚みも増大します。
この膝屈伸に伴う厚みの変化が膝関節屈伸制限がある場合には阻害されていることが知られています。
"膝蓋上嚢に対するモビライゼーション、リハビリ
膝蓋上嚢が癒着すると運動療法での剥離は困難であるとされており、早期からの癒着の予防が重要になってきます。
ほとんどの場合、手術の翌日からリハビリが処方されますが、術後すぐで膝の運動に痛みや恐怖心がある方も多いと思われます。
しかし、紹介する運動療法と徒手操作は膝伸展位で固定していても行うことができますので、参考にしてみてください。
setting
Settingで大腿四頭筋が収縮すると大腿四頭筋腱は浮き上がり厚みを増します。
このとき広筋群の深部に広がる膝蓋上嚢・prefemoral fat padが広筋群に引っ張られるように厚みを増します。
ポイントは広筋群を収縮させたいので、大腿直筋を抑制しなければいけないことです!!
大腿直筋は股関節屈曲の作用があるので、股関節伸展運動がsetting時に同時に行われると、相反神経抑制的に大腿直筋を抑制できます。
持ち上げ(lift off)操作
内外側広筋を正中方向に寄せて大腿四頭筋を持ち上げprefemoral fat padの前方への柔軟性向上を図ります。
「Ω」みたいになるように持ち上げるのがポイントです。