臨床で多く経験する足関節背屈制限。
脳血疾患での麻痺であれば下腿三頭筋が問題になると思いますし、
整形疾患であれば、他の軟部組織が原因になることが多いです。
足関節背屈制限の因子で腓腹筋とヒラメ筋しか答えられなければ、かなり危険です。
他にも制限因子は多くあり、今回はそれを一挙大公開します。
今回は足関節背屈制限を背屈メカニズムの解説と背屈制限要因になりうる3つに焦点をあてて解説していきます。
足関節背屈運動のメカニズム
足関節背屈時の骨の動きをみていきましょう。
足関節というのは脛骨・腓骨・距骨によって構成され、細かくわけると遠位脛腓関節と距腿関節からなります。
足関節背屈では、脛骨と腓骨の間に距骨が入り込んでいく動きとなるのですが、
距骨の骨の形は後方に比べ前方が5mm広い構造となっています。
その広い距骨の前方部が脛骨と腓骨の間に入り込むために、腓骨は挙上・外旋して遠位脛腓関節は開大します。
そして距骨は後方に滑りながら距腿関節は背屈していきます。
重要なのはこの距骨の後方への滑り。
これば阻害されると背屈制限につながるわけですが、
阻害する要因はなんでしょうか。
距骨の後方移動を阻害するということは距骨の後方にある組織が悪さをするでしょう
下腿三頭筋がパッとでてきますが、
それ以外にも後脛骨筋・長趾屈筋・長母趾屈筋も距骨の後方を走行しています。
また、アキレス腱の深層にある脂肪体も距骨の動きを阻害します。
要因1.腓腹筋とヒラメ筋の制限因子
足関節背屈制限ときいてまず真っ先に頭に浮かぶであろう要因は下腿三頭筋ですよね。
下腿三頭筋は、
腓腹筋(内側頭、外側頭)とヒラメ筋から構成されています。
腓腹筋とヒラメ筋の違いは、二関節筋か単関節筋です。
腓腹筋は2関節筋で、ヒラメ筋は単関節筋です。
この違いを利用してふたつの筋のどちらが原因かを鑑別します。
腓腹筋は膝関節をまたいでいるため、
膝関節の角度に影響されます。
ヒラメ筋は単関節筋で足関節を跨いでいるだけなので、
膝関節の角度に影響されません。
そのため、膝関節を屈曲位にして腓腹筋を緩めた状態で背屈するとヒラメ筋が伸長され
膝関節を伸展位で背屈すると、腓腹筋が伸長されます。
膝関節伸展位での背屈制限 → 腓腹筋
膝関節屈曲位での背屈制限 → ヒラメ筋
膝伸展位と屈曲位で背屈可動域が変わらなければ、ヒラメ筋が問題もしくは、腓腹筋やヒラメ筋以外の制限因子が考えれます。
要因2 長母趾屈筋と長趾屈筋の制限
長母趾屈筋は母趾の屈筋、長趾屈筋は第2~5趾の屈筋です。
どちらも趾末節骨まで走行しています。
なぜ背屈制限の要因になるかというと
長母趾屈筋と長趾屈筋は距骨の後方を走行しているからです。
筋が距骨の後方を走行しているということは、
筋の柔軟性低下によって距骨が後方へ滑るのをブロックしてしまい、背屈制限につながります。
長母指屈筋と長趾屈筋の簡単な鑑別方法としては
足趾の伸展で背屈制限が変化するかどうかです。
鑑別方法
【長母指屈筋が背屈制限の原因の場合】
長母指屈筋は母指の屈筋なので、母指を伸展させたまま足関節背屈をして、母指伸展してないときよりも足関節背屈制限が強まる
【長趾屈筋が背屈制限の原因の場合】
長趾屈筋は第2~5趾の屈筋のため、第2~5趾を伸展させたまま足関節背屈をして、足関節背屈制限が強まる
要因3 kager`s fat pad
kager’s fat padとは、アキレス腱部にある脂肪組織のことを指します。
アキレス腱と長母趾屈筋腱、踵骨周囲で構成される空間をkager’s triangleと言い、その空間を埋めるように脂肪組織が存在しているのです。
kager’s fat padは距骨後方に位置しているということは、脂肪組織の癒着や線維化によって硬くなると
背屈運動時の距骨の後方への移動を阻害する事や、
アキレス腱の動きの阻害につながり背屈制限の要因となります。
Kagger’s fat padの動きとしては、
足関節背屈時 → 周囲に広がるように動く
足関節底屈時 → アキレス腱の後方に集まるように動く
このように脂肪組織の柔軟性が足関節運動に必要であることがわかります。
ただしKagger’s fat padを定量的に評価するものはないため実際に触診して左右差を比較するなどで確認することになります。