脳卒中リハと姿勢制御➀~腹内側系と背外側系~【ボバースコンセプト】

脳 立位


姿勢制御と神経システム

私たちが運動をコントロールできているのは、大きく2つの神経システムが関与していることで成り立っています。

例えば、

コップを取る動作では、まず体幹や上下肢の近位筋の調整をして姿勢を安定させてから上肢の遠位筋・手指でリーチして物をとります。

このように運動は、“中枢部の安定”と“遠位部の運動”の2つが組み合わさっていますが、

中枢部の安定には“腹内側系”、遠位部の運動には“背外側系”という神経システムが関与しているのです。

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腹内側系(内側運動制御系)

腹内側系は“内側運動制御系”とも呼ばれています。下行性伝導路であり、脊髄の腹側・内側を走行している神経路のため、腹内側系といわれているのです。

この経路は、姿勢の安定に関与しており、中枢部である体幹筋、骨盤帯・肩甲帯といった上下肢の近位部の筋のコントロール、姿勢筋緊張のコントロールが主な役割になります。

腹内側系を構成している神経路は前皮質脊髄路を除き、脳幹から起始しています。

前皮質脊髄路は、名前の通り皮質から起始しています。

運動を実行するには運動野(4野)が興奮しますが、その前に補足運動野や運動前野(6野)が動作のプランを立てているために興奮しています。

この補足運動野や運動前野は皮質網様体路を介して、橋と延髄の網様体に投射しています。

運動が補足運動野・運動前野でプランニングされて興奮すると、

運動野よりも1/100秒速く皮質橋網様体脊髄路が発火し、体幹や四肢の筋位筋の緊張や収縮をコントロールします。

そのため四肢遠位部の運動よりもはやく姿勢の制御がされ、安定した四肢の運動を行えるのです。

姿勢制御に関する記事はこちら

腹内側系を構成している神経路

  • 網様体脊髄路
  • 延髄網様体脊髄路
  • 内側前庭脊髄路
  • 外側前庭脊髄路
  • 視蓋脊髄路
  • 間質核脊髄路
  • 青斑核脊髄路
  • 前皮質脊髄路
  • 縫線核脊髄路

 

背外側系(外側運動制御系)

背外側系は“外側運動制御系”とも呼ばれています。

下行性伝導路であり、脊髄の背側・外側を走行している神経路のため、背外側系といわれているのです。

この経路は、四肢の運動に関与しており、手指の巧緻運動や歩行時の歩き始めや停止、方向転換などの意識的な動作をコントロールする役割があります。

 

背外側系を構成している神経路

  • 外側皮質脊髄路
  • 赤核脊髄路

の2つになります。

 

外側皮質脊髄路は30%は一次運動野、30%は運動前野、20%は一次体性感覚野から起始しています。

一次運動野に起始する外側皮質脊髄路は対応する局在の対側上下肢・体幹の運動を制御しています。

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脳卒中の患者さんはどうゆう姿勢?

脳卒中の患者さんは体幹部の緊張が低く、腹内側系の働きが低下しています。

それは腹内側系の経路である橋網様体脊髄路は両側性に体幹を支配しており、片方の半球が損傷しても、

体幹部は両側性に機能低下(弛緩など)してしまうことが大きく関与しています。

体幹などの中枢部の安定が損なわれグラグラしてしまうのを、多くは体幹屈曲で固定し代償しています(伸展で固定していることもあります)。

これでは腹内側系がさらに働きにくくなり、四肢を動かす際に代償するように背外側系を多く活動させるのです(ぶん回し歩行など)。

姿勢制御の考えを実際に応用した症例の記事はこちら

立位で下肢を突っ張らせていて股関節や膝の分離運動ができないのは、中枢部の不安定性を代償している結果だとすれば、

治療は腹内側系を対象に介入してから、分離運動の治療を進めるといった順番にするなどを考える必要があるでしょう。

参考図書・教科書