高次脳機能障害である失行・失認の簡便な評価や責任病巣、分類

高次脳



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出典:https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_764.html

失行とは

失行とは麻痺や失調、不随意運動、筋緊張異常、感覚障害などがないにも関わらず、意図した動作を遂行できない状態のことを指します。

 

観念運動失行

自発的にはある運動を行うことはできるが、その運動を口頭で指示したり模倣させるとできなくなる症状です。

 

例えば、櫛で髪をとかす動作は普段行えるが、「櫛で髪をとかしてください」と指示されるとできなくなります。

 

左半球の下頭頂小葉の障害によります。

自発的には動作ができるので患者自身が症状には気づきにくいです。

 

優位半球の被殻出血において、血腫が上縦束まで及んでいると観念運動失行を発症します。

被殻出血の記事はこちら

観念失行

使い慣れているはずの道具を使用する際に手順が正しく行えなくなる症状です。

例えば、紙を折りたたんで封筒に入れる動作では、先に封筒の口を閉じてから紙を折るなど、

構成要素は正しいが、その順序が正しくないという特徴があります。

 

また、このときに使用する物品の名称や用途は説明ができることも特徴です。

左下頭頂小葉の障害によります。

口腔顔面失行

口頭での指示や模倣で口や顔面の動作ができなくなる症状です。

観念運動失行が口腔顔面部に出現した状態といえます。

舌打ちをしたり、舌を出す、目を閉じるといった動作ができなくなります。

左大脳半球の障害によります。

 

肢節運動失行

運動麻痺や感覚障害、筋緊張の異常がない状態にかかわらず、巧緻動作がうまくできなくなります。

中心前回が障害されることが原因であり、損傷半球とは対側の上下肢に症状が出現します

 

日常生活の中では箸を使用することや服のボタンをかけるなどの動作がうまくできなくなります。

構成失行(構成障害)

積み木を重ねたり、図形を描写などの空間的な構成がうまくできなくなる症状です。

右または左の上頭頂小葉~下頭頂小葉の障害によります。

右半球損傷では全体的な把握が困難で、左半球損傷では細部の描写が困難になるといった差が生じることもあります。

 

着衣失行

衣服の着脱を正しく行えない症状です。右頭頂葉の障害によります。

 

拮抗性失行

右手である行為を行おうとしたときに左手がその右手のどうさを制止したり、反対の行為をしようとして目的の動作が遂行できなくなる症状です。

 

責任病巣は解明されていないようですが、脳梁の障害か右前頭葉内側の障害によると考えられています。

 

失行の責任病巣

症状

病巣側

障害部位

観念運動失行

左半球

下頭頂小葉(縁上回)

観念失行

左半球

下頭頂小葉(角回)

口部顔面失行

左半球

大脳半球

肢節運動失行

左or右半球

症状出現側の対側の中心前回

構成失行

左or右半球

上頭頂小葉~下頭頂小葉

着衣失行

右半球

上頭頂小葉~下頭頂小葉

拮抗性失行

右半球

前頭葉内側もしくは脳梁

 

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失認とは

失認とは、感覚障害や知能低下がなく、感覚正しく入力されているにも関わらず、

対象を正しく認識することができない状態のことをいいます。

 

半側空間無視

障害された半球とは対側の視空間を無視してしまう状態のことです。

日常生活場面では、食事の皿の左半分を残したり、左側の障害物に気づかずにぶつかってしまうなど、日常生活を著明に制限してしまいます。

 

右大脳半球の障害によります。右大脳半球損傷患者のおよそ40%に出現するとされています。

 

 

病態失認

自分自身の障害、例えば片麻痺があっても、その障害を認知しなかったり否認したりする状態のことです。

右頭頂葉を含む広範は障害によります。

 

身体失認

・半側身体失認

損傷側とは反対側への注意が低下し存在してないかのように扱われます。

髭剃りでは半分だけ剃り残したり、症状出現側の上下肢を全く使用しないことなどがあります。

右後頭葉後方の障害によります。

 

・身体部位失認

身体を触られても、触られた身体部位を答えられない状態です。症状は両側に出現します。

左または両側の頭頂葉後方の障害によります。

 

地誌失認

認知症や半側空間無視などの症状がないにも関わらず、熟知している場所や道でも迷ってしまいます。

同義として地誌的失見当識や地誌的見当識障害などとも呼ばれます。

さらにこの地誌失認は「街並み失認」と「道順障害」に分類されます。

右頭頂葉の障害によります。

 

視覚性失認

・相貌失認

人の顔を見ただけではその人がだれであるかがわからない状態のことです。

声を聴いたりすることで他の感覚情報があると人を特定することができます

右後頭葉(視覚前野)~側頭葉(側頭連合野)の障害によります。

物体失認とは違い“右”の後頭葉~側頭葉の障害です。

 

一次視覚野からの視覚情報を視覚前野を介して側頭連合野で過去の記憶を結び付けて顔の認識を行うが、

そこが障害されているため過去の記憶と照合せず、その顔が誰なのかわからなくなります。

 

・物体失認

物は見えているがその物がなんであるかがわからない状態のことです。

触ったり、においをかいだり、食べ物であれば食べてみたりすることで、

視覚以外の感覚情報があればその物がなんであるかがわかるという特徴があります。

 

左後頭葉(視覚前野)~側頭葉(側頭連合野)の障害によります。

一次視覚野からの視覚情報を視覚前野を介して側頭連合野で過去の記憶を結び付けて物体の認識を行うが、

そこが障害されているため過去の記憶と照合せず物体がわからなくなります

 

手指失認

手指の名前がわからなかったり、「人差し指」と指示されてもその指を示せない症状です。

左頭頂葉の角回の障害によります。

 

失認の病巣

 

症状

病巣側

障害部位

半側空間無視

右半球

無視側と反対側の頭頂葉後方

病態失認

右半球

頭頂葉

半側身体失認

右半球

頭頂葉後方

地誌失認

右半球

頭頂葉

相貌失認

右半球

後頭葉(視覚前野)~側頭葉(側頭連合野)

物体失認

左半球

後頭葉(視覚前野)~側頭葉(側頭連合野)

身体部位失認

左半球or両側半球

頭頂葉後方

手指失認

左半球

頭頂葉の角回