被殻とは
被殻とは脳の中央に位置し、淡蒼球とともにレンズ核を形成しています。
レンズ核の内側は淡蒼球で、外側が被殻になります。
被殻は大脳基底核の一つです。
大脳基底核は、身体の筋緊張を調整することや随意運動の調整などの身体がスムーズに無意識的にコントロールできるためにかかせません。
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被殻出血とは
脳出血のなかで最も頻度が高いものが被殻出血になります。
全ての脳出血のうち被殻出血が40%ちょっとを占めています。
ちなみに視床出血は2番目に多く、30%です。視床出血の記事はこちら
『視床出血は感覚障害だけではない?症状、原因、治療、予後を解説!』
被殻出血は頻度が多く、出血の大きさによって周辺組織を圧迫したりなどにより、多彩な症状を発症します。
そのため被殻の場所や役割を理解するだけではなく、周辺組織のことも理解することも非常に大切になってきます。
予後予測としては被殻出血は血腫の大きさに比例して予後が悪いそうです。予後予測の記事はこちら
被殻出血の原因血管~レンズ核線条体動脈
被殻出血ではレンズ核線条体動脈という穿通枝が破綻することで起こることが多いようです。
レンズ核線条体動脈は中大脳動脈から分枝し、レンズ核(被殻+淡蒼球)に血液を 送る穿通枝である。被殻出血はこのレンズ核線条体動脈が破綻して起こることが多い(特に外側枝からの出血が多い)脳出血の中でも被殻出血は最も多いため、レンズ核線条体動脈は別名「脳卒中動脈」とも呼ばれている。
引用元:病気がみえる脳・神経
このレンズ核線条体動脈ですが、ラクナ梗塞の好発部位でもあるのですが、それがまた厄介なのです。
梗塞の治療としては血液をサラサラにするために抗血小板薬を用いますが、
血液サラサラだと出血したらとまらなくなることがわかると思います。そのため、ラクナ梗塞の治療時は血圧の管理がとても重要になります。
"被殻出血の症状
被殻出血では、被殻に限定された出血であると症状は軽症であることが多いとされています。
重要なのは被殻出血でその周辺組織まで圧迫しているか、血腫が周辺組織まで進展しているのかです。
それによって周辺組織の損傷によってさまざまな症状が出現することが予想されます。
錐体路や感覚路が通っている内包に血腫が及ぶと運動麻痺や感覚障害が出現しますし、
出血量が多く、脳幹まで圧迫するほどの出血だと意識障害や呼吸障害が出現することも考えられます。
また、血腫が上方へ進展した場合には上縦束が損傷されます。
この上縦束は、障害されると劣位半球では半側空間無視が、優位半球では観念運動失行や伝導失語が出現します。
このように被殻出血では、被殻の周辺組織の障害による症状が出現するため、位置関係や機能を理解しておく必要があります。
被殻出血の治療
出血の量によって外科的な治療をするか内科的な治療するかを選択します。
- 血腫量が31ml以下の場合、内科的治療(保存的治療)
- 血腫量が31ml以上の場合は、開頭or内視鏡下血腫除去術(急性期)
定位的or内視鏡下血腫吸引術(亜急性期)
引用一部改変:病気がみえる脳・神経
内科的治療としては厳重な血圧管理と脳浮腫の管理が主な治療になります。
高血圧は再発のリスクが高いので降圧剤で血圧のコントロールをします。
また、体内の水分の量も非常に重要になってくるので、点滴での輸液をしながら水分の摂取量と排泄量のイン・アウトバランスを調整します。
被殻出血の血腫除去術は、、被殻は外表に近いほうであり、アプローチするまでに神経があまり遮らないことと、
シルビウス裂を経由することで到達しやすいために手術適応になります。
比較的症状が落ち着いたら早期からリハビリテーションをし、後遺症が少なくなるように内科的な治療と並行しながら進めていきます。
被殻出血による共同偏視
脳出血では共同偏視という症状が出現することがあります。
共同偏視とは、左右の眼が両方とも偏ってしまうことです。
損傷された部位によって眼球の傾く方向は異なってきます。
被殻出血では、両方の眼球が損傷側(出血側)を見るように傾くため、仮に右大脳半球で被殻出血した場合は両眼球は右をむくことになります。
視床出血では内下方偏位になります。