身体図式(ボディースキーマ)とは
私たちは意識していなくても、蚊に刺されてかゆい箇所があればそこに手を持っていきかくことができ、
階段を上るときは「どれだけ足をあげれば引っかからないか」なんて事を考えずにスムーズに階段を登れます。
自分の腕や足が空間のどこにあるのか、自分の身体からどんだけ手が離れているのかを無意識的に知っています
この無意識的に知覚している身体各部の空間的関係を「身体図式(ボディースキーマ)」といいます。
身体イメージの記事はこちら
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身体図式(ボディースキーマ)の生成
身体図式の生成は筋、関節、腱、靭帯、皮膚、内臓(重量覚)、網膜、三半規管などなどの身体の感覚受容器からの情報に基づいています。
人が運動すれば、感覚受容器に刺激が入力され、頭頂葉で感覚は統合され身体の各部の位置関係が更新されます。
このように身体に関するフィードバック情報が頭頂葉にて統合されてできたものが身体図式です。
道具の使用と身体図式(ボディースキーマ)の拡大
道具を使用する際には、その道具も自分の身体の一部であるかのように道具を含めた身体図式を生成します。
この身体図式が道具まで及ぶのかを検証した有名な実験は、ニホンザルに道具を使わせた際の多感覚ニューロンの活動の変化を調べたものです。
サルに熊手を持たせて餌を引き寄せる実験では、道具を持っていない時には手のひらで触覚と視覚に反応する多感覚ニューロンが活動し、
熊手を使用した時には熊手の先端まで多感覚ニューロンの活動が記録されたとする実験です。
人間の活動でも
・お箸を使う際には
箸の先まで指の延長として認識されることで起用に物をつまめます。
・車を運転する際には
車の幅まで身体図式をひろげることで「だいたいこのくらいの幅なら通れるな」であるとか、
天井が低いとこを通るときは自分の頭にあたる訳がないのに車の屋根があたりそうで頭をかがめたりすることがあると思います。
これらは身体図式が道具まで拡張していることを示しています。
"身体図式(ボディースキーマ)の機能局在
身体図式を形成する機能局在は「頭頂葉」とされています。
身体図式は体性感覚情報や背側経路からの視覚情報、運藤野からの遠心性コピーなどの情報を統合し生成されます。
この体性感覚と視覚情報の統合は頭頂間溝で行われており、
この頭頂間溝では体性感覚情報と視覚情報の両方に発火するバイモダルニューロンが発見され、身体図式生成に貢献しています。
適切な刺激はボディスキーマの形成に寄与し脳の可塑性にも役立ちます
身体図式(ボディースキーマ)とリハビリ
身体図式は感覚情報に基づき生成されているということは、いつもとは異なる感覚情報が入ると身体図式が変化するということがわかります。
つまり、私たちセラピストが触れる・動かすなどで感覚入力を促せれば、身体図式が変化し、運動が変化できるということです。
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膝蓋骨の骨折を例にします
膝蓋骨骨折では術後何週かはニーブレイスを着用し膝が動かないように固定をします。
荷重は許可されることがほとんどですので、膝を伸展位で固定したまま歩行をします。
おそらく振り出す際には、体幹の側屈や骨盤挙上、股関節のぶん回しでの歩行になります。
すると身体図式には「歩行時に膝は曲がらないもの」として生成され、ニーブレイスを外したあとも膝伸展位のままの歩行となってしまいます。
片麻痺の患者さんでも同様に、膝折れしないように膝をロックし股関節の伸展を骨盤の後退で代償して歩行をしていると、
膝と股関節は動かないものとして身体図式が生成されてしまいます。
リハビリでは動く感覚、動かせる感覚を認識させることで身体図式が変化し、動作の変化につなげていくことが重要になります。