パーキンソン症候群とは
パーキンソン症候群とは、パーキンソン病と同様な症状がでる病気になります。
パーキンソン病の原因としてはドパミンの神経細胞の減少とされますが、パーキンソン症候群は、薬剤性や脳血管障害性、脳炎などが原因となります。
パーキンソン病とパーキンソン症候群は症状は同様なものが現れるため、どのように鑑別するのでしょうか。
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パーキンソン病の診断基準とパーキンソン症候群
厚生省が示しているパーキンソン病の診断基準は以下の通りになります。
次の1~5のすべてを満たすものをパーキンソン病と診断する.
1.経過は進行性である.
2.自覚症状で以下のうちいずれか一つ以上がみられる.
A:安静時のふるえ(四肢または顎に目立つ)
B:動作がのろく拙劣
C:歩行がのろく拙劣
3.神経所見で以下のうち,いずれか一つ以上がみられる.
A:毎秒4~6回の安静時振戦
B:無動・寡動(仮面様顔貌、低く単調な話し方、動作の緩徐・拙劣、姿勢変換 の拙劣)
C:歯車現象を伴う筋固縮
D:姿勢・歩行障害:前傾姿勢(歩行時に手の振りが欠如、突進現象、小刻み歩 行、立ち直り反射障害)
4.抗パーキンソン病薬による治療で自覚症状・神経所見に明らかな改善がみられる.
5.鑑別診断で以下のものが除外できる.
A:脳血管障害のもの
B:薬物性のもの
C:その他の脳変性疾患
このようになっています。つまり、進行性であり、パーキンソン病の4大徴候がみられ、パーキンソン病の薬で症状の軽快がみられ、パーキンソン症候群の可能性が除外できることがパーキンソン病と診断される基準なのです。
そのため、この診断基準に当てはまらない場合にパーキンソン症候群の可能性が疑われるのです。
パーキンソン 症候群の主な原因疾患
1.薬剤性パーキンソン症候群
ドパミンに対して拮抗作用があるハロペリドール、クロルプ ロマジン、スルピリド、ドンペリドン、レゼルピンなど によって起こります。
パーキンソン病と比較すると進行が速く、薬の服用を中止することで症状の軽快がみられます。
2.脳血管性パーキンソン症候群
多発性脳梗塞やビンスワンガー型白質脳症が原因で起こります。
脳血管障害性の特徴としては段階上の経過をとって、認知症や錘体路症候、また小脳症状など も合併することが多いとされます。
パーキンソン病でみられる安静時振戦はみられないことが多く、抗パーキンソン病薬に対して反応は小さいです。
3.線条体黒質変性症(MSA-P)
パーキンソン病と比較して好発年齢はやや若く(平均 57歳)、進行が比較的速く、発症してから死亡するまでの期 間も短いことが多いです。
症状としては筋固縮と無動症状が特徴で、安 静時振戦はみられないことが多いです。
経過中に小脳症状や錐 体路症状や神経因性膀胱などの自律神経症状が出現します。
MRIでは線条体の萎縮や橋、小脳の 萎縮が見られ、抗パーキンソン病薬の効果も少ないです。
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4.進行性核上性麻痺(PSP)
パーキンソン病と比較すると経過は短く、安静時振戦は少な いです。
淡蒼球、視床下核、黒質の変性が起こり、画像では中脳被蓋部の萎縮や第三脳室の拡大が見られます。
抗パーキンソン病薬の効果は少ないです。
核上性の垂 直性眼球運動障害や頸部のジストニア、仮性球麻痺をを合併することが多いです。また早期より認知症を伴います。
5.レビー小体型認知症
パーキンソンの症状より先行して進行性の認知症が出現します。
それに伴い幻視や一過性の意識障害、妄想、抗精神病薬に対する過敏性がみられることが多いです。
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パーキンソン症候群の鑑別診断
原因疾患は上記に挙げた通りになりますが、パーキンソン病との鑑別はどうされるのでしょうか。
パーキンソン症候群の鑑別で重要な情報は、患者さんの自覚症状と病気を発症してからの経過、生活暦や既往歴、そして医師による診察所見になります。
MRIなどの脳画像の所見やMIBGシンチグ ラフィーが鑑別診断に有効なことがあるようです。
また、パーキンソン病の治療薬であるL-ドパが有効であるかどうかも診断材料として重要になります。
パーキンソン病とパーキンソン症候群の治療と予後
パーキンソン病は、ドパミンを生成する細胞は減少しますが、ドパミンを受容する細胞は減少しないので、理論上は薬 の効果はずっとあるはずで、予後は良いとされます。
一方でパー キンソン症候群の場合は、ドパミンを受容する細胞が障害されることが多いために薬が効かず予後は悪いとされます。
パーキンソン症候群の治療としては基本的には原因疾患の治療と とリハビリテーションになります。