10m歩行テストを行う目的
10m歩行テストは定量評価となり信頼性・再現性が高く、歩行自立度やバランスの良し悪しを簡単に評価できます。
転倒の危険性を予測する指標であり、また、歩行時間を測定することで、屋外歩行時に横断歩道を青信号の時間以内で渡れるのかを判断できるため、10m歩行テストを実施することは重要な意味があります。
再テストしたときに歩行速度が速くなってたら患者さんのモチベーションも上がりますよね。
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10m歩行テストの実施方法
必要な物品:ストップウォッチ、テープ、メジャー(距離を測るため)
測定環境の設定:
10m距離を測り両端にテープを貼ります。この10mが時間と歩数を計算する測定区間です。測定開始のテープから3m助走距離をとってテープを貼ります。同じく測定終了のテープから3m離してテープを貼ります。合計で16mの距離ができます。
測定開始と測定終了のほかに助走3mと終わって3mの距離をとる理由は
歩き始めはやや本来のスピードになるのに時間がかかるので、助走距離をとり、10mで終わりにするとその手前から減速してしまうため、おわってからも3m程歩いてもらいます。
方法:
患者さんには16m間を歩くことを説明しておきます。走らずに一定のスピードで歩くことを指示します。検者は10mのスタートラインを患者さんが超えてから時間と歩数を数えはじめ、10mの終了位置で時間と歩数を数えるのを終えます。
10m歩行テストを評価するうえでの実際の臨床の注意点
●検者は被検者と共に歩行しますが、被検者に影響しない位置で歩くようにします。例えば斜め前に検者がいると、急かされて自分の歩行速度ではなくなってしまうためです。
●なるべく人どおりが少ない場所や外部からの影響が少ない場所で測定します。再測定時も同じ場所で行います。
●体調や気分によって歩行速度に変化があるので、その日の体調を確認するようにします。
●介助が必要な場合は信頼性が低いため行わないです。介助方法の違いなどがあるため。
時間だけではなく歩幅と歩行率も測定
この10m歩行テストでは時間だけではなく、歩幅と歩行率も測定することが可能なのです。
歩幅は
長さを歩数で割ると計算できます。
m÷歩数=歩幅
例:10m÷10歩=歩幅100㎝
歩行率(ケイデンス)は1秒間に何歩歩いたかです。
歩数を歩行時間で割ると計算できます。
歩数÷歩行時間=歩/秒
例:10歩÷10秒=1歩/秒
快適歩行速度で測定すべきか最大歩行速度で測定すべきか
高齢者で最大歩行速度を日常で行うことがあるかと考えると、ほとんどないのかなと思います。働いている私たちの年代、現役世代は例えば遅刻しそうとか、バスに乗り遅れそうとか、時間に追われて生活しているのでけっこう最大歩行速度で歩くか思いますが。
ですが、テストの再現性を考えると、最大歩行速度のほうがよさそうです。TUGの記事でも述べましたが、落ち込んでるときや疲れているときって快適歩行速度って遅いと思います。気分に左右される部分もあるので。
関連記事はこちら
『ファンクショナルリーチテストの目的、評価方法、カットオフ値を解説』
ではどっちで測定すれば良いのか!?
高齢者でも最大歩行速度で歩いてもつまづかず転倒の危険性がないのであれば、最大歩行速度を測定し、そうでなければ快適歩行速度を測定する、または両方を測定するといったスタンスでいいのではないでしょうか。
注意したいのは、再テストとなったときに前回と歩行の速度は同じでなくてはなりません。前回最大歩行速度で測定したのなら、今回も最大歩行速度で測定です。
"10m歩行テストのカットオフ値
片麻痺患者さんでのカットオフ値は快適歩行速度で、つまり1秒間に何m進むのかで決められています。
一応10mを何秒で歩くことになるのか、歩行速度を秒数に変換したので参考にしてみてください。
0.4m/s未満:10mを歩くのに25秒以上かかる
移動が屋内歩行にとどまることが多い
0.4〜0.8m/s:10mを12.5秒~25秒の間の時間で歩ける
一部で屋外歩行可能
0.8 m/s以上:10mを12.5秒以内で歩ける
屋外歩行自立(ショッピングモールの移動など含め)
サルコペニアの診断基準にも10m歩行速度が「0.8m/sec未満」という項目があります。
サルコペニアの記事はこちら
横断歩行の青信号の時間と10m歩行の関係
一般的な歩行者用青信号は、歩行者の速度を1秒間に1mとして設定されています。
つまり、幅10メートルの道路であれば、点滅を含まない歩行者用青の時間は最低10秒程度です。
法的に「道幅が○メートルなら○秒青でなければならない。」という取り決めはないはずですが、実地調査の積み重ねにより1秒/1mとされているそうです。
高齢者の歩行速度は1秒間に0.75mとされるので、点滅を含めてやっと渡れるといったところでしょうか。
そのため、青信号の途中から渡り始めるのではなく、一度立ち止まって赤から青に変わるのを待ってから渡るようにするとそこまで急がず安全に渡れるでしょう。