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私は回復期の病院で働いていますが、一日に一回は必ずと言っていいほど大腿骨転子部骨折か頚部骨折の患者さんのリハビリをさせていただいています。
みなさんも高齢者の四大骨折とされているので、臨床で出会う頻度は高いと思います。
大腿骨転子部骨折のリハビリについての記事はこちら
そんな転子部・頚部骨折などの下肢骨折の患者さんに共通した訴えとして、
患側に荷重したときや歩行時に術創部周囲に痛みを訴えることが多いのではないでしょうか。
手術で切開したことによる筋や筋膜の滑走障害や伸張性の低下により痛みが生じていることが考えられますが、
一つ疑問におもうことがあります。
「歩き始めが痛いけど、歩きだしたら痛くないんだよね」
ん?歩き始めだけ?患側の立脚期のときは毎回痛いんじゃないの?
と。
同じことを訴える患者さんは多く、自分自身もこの訴えを改善できなかったこともあり、
今回はこの歩行開始時痛について調べたので解説していきます。
歩き始めの痛みは意識的な歩行と無意識的な歩行が関与
歩き始めるときは「よし、足をだそう。」のように意識的に行い、歩きだしてしまうと自然と足が前にでます。
私たちは歩いているときに一回一回「よし、足をだそう。」とは考えず、無意識に歩いています。
足のことは気にせず携帯をいじりながら歩くこともできます。
このように無意識的に歩行を継続できるのは、「CPG(Central Pattern Generatar)」という歩行、咀嚼などのリズム運動を制御している神経回路網が関与しています。
このCPGが機能するのは、一定のリズムに乗った時であり、歩行開始時や立ち止まるとき、
障害物を避けるときには大脳皮質の関与が大きく、意識的なものになります。
ということは、歩き始めの疼痛はこの意識をしていることが問題になってくるのではないでしょうか。
また、患側を振り出すときではなく、患側の立脚期に痛みを訴えることがほとんどなので、
意識的に患側に荷重をかけることが痛みを出す原因になっているのではないでしょうか。
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なぜ歩き始めに痛いのか
手術で侵襲された筋や皮膚などに滑走障害、伸張性低下などの器質的な問題で痛みが
生じていることも考える必要はありますが、これ以外の「意識が向かれている」ことに注目してみます。
大腿骨転子部・頚部骨折の方で患側の股関節を屈曲していくと
「それ以上曲げたらコキッとしそう、痛くなりそう」と言われることがあり、防御性収縮が入り、抵抗感が増してしまうことがあります。
しかし、話をしながら股関節を屈曲していくと、特に抵抗感なく屈曲できることが多いのです。
これは痛みに注意が向いており、痛かった時の記憶で「前は以上曲げたら足の付け根にピキッとした痛みが走ったから、今もそうなるだろう」というイメージが想起されて、
それ以上屈曲されないように防御性収縮されたのではないでしょうか。
なのでその痛かったイメージが想起されないように何か関係のない話で注意を反らすことで防御性収縮がでないのだと考えられます。
今回の歩き始めの患側荷重時痛に関しても、
①手術直後からのまだ炎症が治まっていない時期からの立位訓練を行う。
②患側に荷重をかけて痛かった。
③炎症や筋の滑走・伸張性が改善されてからも「手術した足に体重をかけたら痛い」というイメージが刷り込まれているため、患側荷重時に防御性収縮が入り、痛み出現。
というメカニズムで歩き始めの痛みにつながっているのではないかと考えられます。
歩き始めの痛み、歩行開始時痛への治療介入、リハビリ
リハビリとしてはこの「荷重したら痛い」というイメージと疼痛にのみ注意が向いてしまっていることに関して介入して、
イメージの変化と下肢に荷重する際の注意の向け方を指導していく必要があります。
具体的には
一側の下肢の荷重を増やしていくということは
・骨盤が荷重する下肢側方向にシフトする
・荷重側の体幹の抗重力伸展運動
・荷重側の足底にかかる圧力が増加
することを1つずつ確認していきます。
骨盤のシフトと体幹の抗重力伸展運動は患者さんに伝える際には骨のアライメントの変化に注意を向けてもらいます。
①骨盤に手をあてて荷重側に移動するか確認
②骨盤が移動したときの両肩が水平か?荷重側の肩からの垂直線が大転子?とラインは一緒か?
大転子の位置は足部の外果よりも外か内か?
③このときの足底には荷重が増えた?爪先側と踵側、それとも真ん中らへんに体重かかってる?
歩行につなげる際には
患側を振り出して踵接地し、IC~Tstまでの足底の圧力の変化の仕方や、先ほどと一緒で、骨のアライメント変化を確認していきます。
このように患者さんの注意が疼痛に向けないように訓練を進めていくと、
歩行開始時の注意が痛みではなくアライメントや足底への荷重に向き、痛みが少なく歩行を始められると思います。