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胸郭出口症候群の病態
首には神経や血管、筋肉など多くの組織が密集しており、腕を支配する神経や血管は、胸郭出口と呼ばれる部分を通って首から腕に向かって走行しています。
胸郭出口を通過する重要な神経として腕神経叢、主要血管として鎖骨下動脈や鎖骨下静脈があります。
胸郭出口症候群とは、上腕や肩の運動や感覚に深く関わる神経や動脈が圧迫されることで、肩、腕、手のしびれや痛み、手の動かしにくさなどの症状が現れる状態を指します。これが肩こりとして自覚されることもあります。
胸郭出口症候群は、なで肩の女性に多く見られるほか、トレーニングを好む男性にも発症することがあります。
また、アスリートでは、野球の投球動作、テニスのサーブ、バレーのアタック、水泳選手など、オーバーハンドスポーツや腕を回す動作が多い競技に多く見られます。
発症には日常生活の動作も関与しているため、規則正しい健康的な生活スタイルの確立が重要とされています。
胸郭出口には体の構造上、狭い空間が存在し、これらの場所で神経や動脈が圧迫されることがあります。
胸郭出口症候群の発症メカニズムとしては、以下の狭窄部位が挙げられます。
1. 前斜角筋と中斜角筋と呼ばれる首の筋肉で構成される部分
2. 鎖骨と肋骨の間
3. 小胸筋と肩甲骨との間に構成される部分
これらの狭窄部位で神経や動脈が圧迫される可能性が高く、それぞれ斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋症候群と呼ばれます。
これらを総称して胸郭出口症候群と言います。
"胸郭出口症候群の症状
胸郭出口症候群は、腕や手を支配する神経や血管が圧迫されることで発症します。そのため、神経症状として首や肩、腕にしびれやちくちくする感覚、刺すような痛みを感じることがあります。これらの神経症状は、手先や体幹にも現れることがあります。
神経障害が持続すると、筋力の低下も見られ、運動機能にも影響が及びます。具体的には、手の握力の低下や巧緻性(指先の器用さ)の低下が挙げられます。
血管の症状としては、血行の悪化により皮膚が白くなったり青紫色になったりします。血行障害により痛みや感覚障害が引き起こされることもあります。
胸郭出口症候群の治療、リハビリ
胸郭出口症候群において、神経が絞扼されやすい領域は3つのポイント(斜角筋隙、肋鎖間隙、小胸筋下隙)があります。
それぞれの部位での腕神経叢の絞扼のメカニズムが異なり、リハビリテーションではこれらのメカニズムに応じた介入方法を選ぶ必要があります。
斜角筋隙
この部位は頚髄から分枝した頚神経が腕神経叢になり、末梢に向かう経路の中で最初に通る絞扼好発部位です。
頸部側面で前壁が前斜角筋、後壁が中斜角筋、底面が第1肋骨で構成されています。
前斜角筋と中斜角筋の緊張が亢進すると、腕神経叢が絞扼されやすくなります。
デスクワークで前屈みの姿勢が多い場合や頸部の筋疲労がある場合、またいかり肩や歯ぎしりのある方、入眠障害のある方に多く発症します。
この場合のリハビリテーションでは、斜角筋の筋緊張に加えて、咬筋や内側翼突筋など顔面周囲の筋緊張も確認し、横向きの状態でこれらの筋肉の柔軟性を改善します。
肋鎖間隙
この部位は第1肋骨と鎖骨の間を腕神経叢が通る場所で、なで肩姿勢の方に多く見られます。
なで肩姿勢では鎖骨が“ハの字”向きになりやすく、それにより鎖骨と第1肋骨の間の肋鎖間隙が狭まり、腕神経叢や鎖骨下動静脈が絞扼されやすくなります。
リハビリテーションでは、背臥位で鎖骨を動かすモビライゼーションを行います。
理学療法士が患側の鎖骨を把持し、肩から上肢を回旋させて動かします。
小胸筋下隙
ここは腕神経叢が胸部前面にある小胸筋の下を通る部位です。
前面は小胸筋、後内側面は前鋸筋と第2~4肋骨、後外側面は肩甲下筋で囲まれています。この部位での腕神経叢の絞扼も、なで肩や猫背の方に多く見られます。
リハビリテーションでは、小胸筋のストレッチを目的に背臥位で小胸筋のダイレクトマッサージを行ったり、上肢挙上位で前面と腋窩から小胸筋を把持しながら腕を回旋させるマッサージ方法を用います。
いずれの場合でも、絞扼に関わる筋の緊張を緩和した後に、良姿勢を保つために必要な僧帽筋下部線維の筋力トレーニングを行うことが望ましいです。