視床とは
視床とは、内包後脚の内側に位置し、中枢神経系で最大の灰白質の塊です。
視床は嗅覚以外のすべての感覚の中継点となり、大脳皮質に情報を送る役割があります。
視床は間脳の一つであり、大脳半球の中心にあります。
そのため、この部位で出血があっても手術適応にならないことがわかります。
"視床出血とは?
視床出血は脳出血の中では被殻出血に次いで2番目に頻度が高く、脳出血全体の約30%を占めます。
重症であり、予後も不良とされています。
予後予測としては被殻出血は血腫の大きさに比例して予後が悪いそうです。予後予測の記事はこちら
視床出血の治療は?原則は手術適応はない
視床のすぐ外側には「内包後脚」があり、この内包後脚には運動神経や感覚神経が通っています。
手術で血腫をとろうとして、もしこの内包を傷つけてしまうと症状を悪化させてしまうため、開頭血腫除去術の適応にはなりません。
外科的治療(脳室ドレナージ)になる場合は?
視床出血では、内包が近くにあるため傷つけたくないので原則は開頭血腫除去術などの外科的治療は行いません。
しかし、手術が適応になる場合もあります。
それは視床の近くにある脳室にまで血腫が及んでしまい「脳室内穿破」になっている場合です。
この脳室には髄液が循環しており、脳室に血腫が及ぶと髄液の循環を妨げてしまい、脳室が拡大してしまいます。
この髄液の循環障害で脳室が拡大してしまうことを「水頭症」といいます。
水頭症で脳室が拡大していき、まわりの脳実質を圧迫していくことで簡単にいうと脳が破壊されていくのです。
意識障害や生命にもかかわるため、
視床出血で「脳室内穿破」を認める場合は、緊急で「脳室ドレナージ術」という脳室内の髄液や血腫を抜く手術を行います。
視床出血の内科的治療
視床出血だけでなく脳出血は高血圧が原因のため、血圧のコントロールが重要になります。
収縮期血圧140mmHg以下を目標に
降圧剤でのコントロールと、体内の水分の量も血圧に関係するので、点滴で輸液しながら水分のin/outバランスを管理します。
また、脳浮腫による周辺組織の圧迫も避けるため抗浮腫薬であるグリセロールなどの投薬も行います。
比較的症状が落ち着いたら早期からリハビリテーションをし、後遺症が少なくなるように内科的な治療と並行しながら進めていきます。
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視床出血の症状
頭痛
視床出血に限らず、脳出血の場合は脳内の圧力が上昇するため頭痛が起こります。
感覚障害
視床は感覚情報の中継点であるため、視床が損傷すると感覚障害が起こります。
運動麻痺は損傷半球とは反対側に出現します。
「右視床出血」であれば「左麻痺」になります。
運動神経も感覚神経も視床よりも下にある「延髄」で反対側へ交差して脊髄に下行していくためです。
運動麻痺
視床のすぐ外側を「内包後脚」という運動神経や感覚神経の通り道があります。
視床出血の血腫がこの内包まで及ぶことで運動麻痺がおこります。
運動麻痺は損傷半球とは反対側に出現します。
「右視床出血」であれば「左麻痺」になります。
視床痛
視床が障害されたことで引き起こされる麻痺側の強い疼痛のことをいいます。
まだメカニズムは解明されておらず、薬による鎮痛の効果も薄いのが現状です。
意識障害
視床出血によって意識を司る脳幹の圧迫につながると、意識障害を引き起こします。
また、視床出血が脳室に穿破して頭蓋内圧亢進を招くと、脳実質が圧迫されて意識障害のほかにも嘔吐や痙攣などの症状出現する可能性があります。
眼球の内下方偏位
視床出血による脳浮腫で視床の近くにある上丘が障害されると出現します。
視床出血では、鼻先を凝視するような眼球の内下方偏位が出現します。
ちなみに被殻出血の場合は損傷した被殻の方向に両方の眼球が向いてしまう共同偏視が出現します。
被殻出血の記事はこちら
視床出血の原因と出血を起こす血管
視床出血の原因は高血圧にあります。
視床に限らず脳出血の原因は高血圧であることがほとんどです。
日中の活動的な時間に発症することが多く、突然の感覚障害や頭痛、意識障害が出現します。
視床穿通動脈と視床膝状体動脈
視床穿通動脈は、後交通動脈の前で後大脳動脈から分枝し視床に血液を送る穿通枝である。
視床膝状体動脈は後交通動脈の後で分枝する穿通枝である。
(引用一部改変:病気がみえる脳・神経)
被殻出血ではこの視床穿通動脈と視床膝状体動脈という穿通枝が破綻することで起こることが多いようです。
視床出血の予後
視床出血は予後不良とされています。
視床の下には「脳幹」という生命維持を司る部位があります。
そのため視床出血にて血腫が脳幹に及んだり、圧迫してしまう場合は意識障害にもつながり、リハビリも進みずらいことにもなります。この場合は予後不良のようです。